体育祭2
開会式が終わると、次々に種目が進まれていく。私は生粋の文科系だから苦手な体育は嫌いで、自分の競技を終えたら早々に傍観する立場に徹した。そしてテントからグラウンドをぼーっと見ていたとき、周りにいた生徒たちがざわつくのを感じた。
百合ちゃんが競技に出るようなのだ。
「間宮ちゃんガンバ〜」
「ガチで可愛いよな」
「はぁ、顔面強すぎて…あたしずっと見てられる」
「腰が何であんな位置にあるの…足の長さが…隣には並べないわ」
美しすぎる彼女は既に学校中のアイドル的存在になっていて、男子は勿論だけど女子のなかにも彼女に憧れを頂く人が多い。
そんなことも知らない本人は平然とした様子で障害物競技に出場したかと思えば、相変わらずの常人離れした身体能力を発揮し、二位との間に圧倒的な差をつけて一番にゴールしていた。
最後のパン食い競争では加減を間違えたのかジャンプし過ぎて、パンをぶら下げていた棒にぶつかりそうになっていれば会場全体からどよめきの声が上がっていたし。
でもそれすら耳に入らないのか、百合ちゃんは嬉しそうにパンを咥えて、ゴール早々に開封して食していたけど。
それから午前の競技が終わって、やっと昼休憩に入った。テントで各クラスごと持参したお弁当を食べるようになっている。
私も別の友達と一緒に輪を作って食べようとしたところで、ふと百合ちゃんがいないことに気付いた。どこ行ったんだろ、と思って辺りを見渡せば、彼女は未だに例の上級生二人と一緒にいた。
「せやから粒あんが一番やって」
『こしあんの方がなめらかで美味しい』
「粒あんの方があんこ感満載やん、あほか」
「ねぇ、この討論まだ続ける気?早くお弁当食べないと時間なくなるよ」
「…お前のせいで怒られたやろが」
『善さんが「こしあん派」と言えば済む話だよ』
「なんで俺が折れなあかんねん!」
「そろそろ百合ちゃんも自分のテント戻ったら?」
『うん。でもその前に二人のお弁当見てみたい』
「見てもなんもおもろくないぞ」
『善さんのはたこ焼きが入ってるかもしれないからね』
「お前の関西人への偏見はどないやねん」
二人のあとに付いていった百合ちゃんは、そのまま上級生のテントの方にお邪魔していった。女子の先輩からも歓迎されていたから、流石だ。
「百合ちゃんここ座りなよー」
『お気遣いありがとうございます。でもここで大丈夫です。直ぐ帰るんで』
「えーざんねーん」
『後でまたお邪魔させてもらいますね』
「…間宮が礼儀良くしとる」
『私だって目上の人には弁えるよ?』
「お前の目の前におる人間も目上やで…?」
「善は、んなキャラじゃねぇだろ〜」
「はぁ!?」
「そうだね」
「楓太まで?!」
上級生たちのクラスからどっと笑いが起きていた。私が噂で耳にしたのは、例の二人がクラスから浮いているって話だったけど、あのステージの影響によって良い方向へ変化したらしい。
勿論全員がそうなったわけじゃなくて、見るからに面白くないと言う先輩もいたけど、でも今まで二人だけだったのが、少しずつ周りと打ち解けていったことで下手に口を出せなくなったのか、あからさまに邪見にするものはいなかった。
きっと二人にとって、百合ちゃんはスーパーマンみたいな存在なんだろうな。