音駒の粘りのプレーの前に烏野高校は負けた。その後も全部で3試合行ったが烏野高校のストレート負けとなってしまった。
高嶺はパイプイスをガチャリと定位置に戻した後、体育館をぐるりと見渡す。孤爪が持っているので最後だろうか。こちらに歩いてきている孤爪に駆け足で近寄った。

「孤爪さん、私が運びます」

声をかけると孤爪は何とも形容し難い表情をする。

「高嶺、だっけ」
「はい」
「オレ、体育会系の上下関係あんま好きじゃないから…別に敬語とか、そういうのいらない」
「…でも他校の先輩さんですし」

ふぅ、とため息紛いの息をひとつ吐いて高嶺にパイプイスを差し出す。だけども彼が持っていた2つともではなく、1つだけ高嶺に手渡したのだ。

「じゃあ、はんぶんこ」

無表情な、パッと見ただけでは何を考えているのか分からない表情。それはどことなく高嶺と似ていた。

「孤爪さんお優しいんですね…」
「うーん、たぶんその考え方は違うと思う…ねえ、やっぱりそれ止めない?」
「それ、ですか?」
「"孤爪さん"とか呼ばれ慣れてないから気持ち悪い」
「……研磨、さん?」
「ん」

***

「友よ!また会おう!!」

涙を流し、握手を交わす二人の異様な雰囲気に誰も目を合わせる者はいなかった。1日という短い時間だったにも関わらず、まるで前からの知り合いだったかのような光景に高嶺はいい相手に出会えたんだなと実感していた。

他の部員と共に見送ろうと思った瞬間、何やら両腕に温もりを感じた。

「研磨さんに、招平さん?」

気付けば、彼女の両サイドには研磨と福永の二人が立っていた。

「巴は音駒のマネージャー」
「一緒に帰ろう」
「お前ら、お持ち帰りする気かよ」

グイグイと強い力に引っ張られる高嶺。その光景にピシリと固まっていた烏野は我に返り、音駒は楽しそうにその光景を見守った。

「うちの人見知り―ずが懐いちまってるからな、高嶺ちゃんにはこっち来てもらうしかないよなー」
「ふざけるな、黒尾。高嶺はうちのだ」
「黒尾、いつまでやってんだアホ。研磨、福永!巴は烏野のマネージャーなんだから諦めろ」

一通りのバカ騒ぎを終え、夜久は冷静にその場を仕切る。黒尾は「残念」とちっとも思っていない顔でそう言葉にしたが、研磨と福永の二人は心底ショックを受けているようだった。

「ホラホラ、永遠の別れじゃないんだ。連絡先ぐらい交換して電話でもなんでもすればいいだろ」
「そうか」
「巴、交換しよう」
「分かりました」
「んじゃオレもー」

夜久の一言により研磨たちだけでなく、黒尾たちまで参加してきて、結局殆どの人とアドレスを交換することになった。
そうして最後に音駒高校を手を振りながら見送る。

「そういや高嶺さんも研磨とメール交換してたよね!いつの間に仲良くなってたの?」
「研磨さんとは片付けのときに」
「え?」
「あ?」

日向の顔からいきなり笑顔が消え困惑した表情になり、それに加え別の方向を見ていた影山も高嶺の方に振り向きました。

「え、ちょっ、もっかい言って!研磨がなんだって??」
「研磨さんとは、」
「っなんで!!?」

一体なにがダメなのか分からない。

「そんなんだといつか他校に誘拐でもされそうだね、巴チャン?」

後ろから現れた月島は呆れたように呟く。

「っちょ、何してんの?!絵面ヤバいから高嶺さん囲むのは止めよう?」
「山口、巴チャン他校に心変わりしそうだって」
「えっ?どういうこと?!」

そうして一年ズが騒いでいるなか、高嶺はひとり首を傾げていた。

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