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山口の高校初めての試合出場は失敗に終わったけれど、流れを変える事には成功した。悔しい思いをした山口の為にもベンチで応援している仲間の為にも自分たちに時間をかけてくれているコーチや監督の為にも
――次も戦うチャンスを掴め!!

青城は20点台へと乗った事により烏野に後は無い。それでもそんな事に怖気づいてしまっているような選手は誰一人としていない。

俺がとってやる

俺のところにもってこい

俺が決めてやる

全員が、これまでにない集中力を見せていた。打っては拾われ、打ちこまれては拾い。蓄積されていく疲労、それでも動きを止める者などこの場には誰一人としていない。20点代に烏野も乗るが、このままでは負けを待つのみ。

"目の前の球が全部!!"

ブロックされたボールを自らの足であげる田中。

及川のスパイクをあげる澤村。

――負けてたまるか

「っしゃあああ!!」

それは青城とて同じ事。マッチポイントを迎えた青城。本当に後がなくなった烏野。

「野郎共ビビるなァーッ!!前のめりで行くぜ」

西谷の鼓舞に笑顔が戻る。
声援を送る巴。スコアノートを握る清水の手にも力がこもる。
絶対落とすな

せめて触れ

体を張った田中のレシーブをワンハンドトスで上げた影山。そして、それを打ち抜いた日向。

「お、追いついたーっ!!」

烏野が青城の背中を掴んだ瞬間。青城がタイムアウトをとるも焦っている様子はない。及川がこれまで目立たなかった国見へと声をかける。

「国見ちゃんイケるね?」
「ハイ」

影山は元チームメイトのプレーを思い出していた。共に戦ってきたはずなのに見た事もないその姿に驚きを隠せずにいる。

「チャアアンスボォォオル!!」

タイムアウト終了後田中のサーブで始まった試合はまさしく白熱した試合となっていた。一分一秒でも集中力を切らせない。一瞬でも集中力を切らせた方が負ける。打っても決まらない、拾っても決まらない。そんなラリーが続く中、ここに来て及川がサーブをミスした。

「これでチャラな。どっちだって同じ1点だ」

青城は崩れなかった。エース岩泉の1点と一言により青城が総崩れになる事を免れた。国見を中心としたトス回しになった青城。必死に逃げる烏野。

そしてついに30点を超えた。
及川のサーブ、彼のその姿に何かが重なって見える。追い込まれている状況に先程のサーブミスもあったというのに、彼からは何か余裕を感じる。それは、極めたからこそ持てる自信。

――誰かに似ているその姿

ドガガンッ

ここにきて及川は今日の試合で最高のサーブを叩きこんだ。なんとか澤村があげるも勢いを殺す事はできず、ダイレクトで青城へと返っていく。

「くそスマン!!」
「あんなの上がるだけで有難いっつーの!」

また国見にあげられたトスに影山が不審に思う。国見とはこんなに動く選手だっただろうか。国見とは後半に力を見せる選手だっただろうか。

ふわりと落とされるフェイント

烏野が逆転される。

今まで見た事のないチームメイトの力を引き出しているその姿に敗北を感じてしまった影山。自分だけではないはずなのにコートにはたった一人でいるような、そんな感覚に陥った。

「おいまさかビビってんのかダッセー…ふがし!」

日向の声に振り向けば、そこには自分の仲間が立っていた。自分のトスに答えてくれる人間がいる、自分を信じてくれる人間がいる。

ここまでやってきた、仲間がいる。

"ちゃんと皆強い"

及川のサーブに乱されるも、なんとか上げて続いているラリー。エースが打てばエースが打ち返し、ダイレクトボールも拾い上げる。どこから来るか、誰が打つかなんて最早わからないくらいなのに。

そう簡単に読めるような試合展開じゃないというのに巴の中には影山に綺麗なレシーブが返った瞬間に抱いてはいけない予感が浮かんでしまう。それは観覧席から客観的に見えていたから気付いたのだろうか。それは巴自身にもわからない。

日向と影山による変人速攻がブロックに叩き落された。そのボールは拾われる事なく、烏野のコートへと落ちた。

「――うおっしゃああああああああああ」

勝者、青葉城西高校

***

巴はただ、悔しげな表情を浮かべるチームメイトをじっと見つめていた。いい試合だったと賞賛する訳でも拍手をする訳でも、悔しさに涙する訳でもなくただじっと立ち尽くしていた。

先程まで試合をしていたコートには既に違うチームが入っている。30点を刻んでいた得点板は00へと戻されている。

重い足取りで体育館の外へと出ていく姿を見送って、フラリと巴も足を踏み出した。



「"負け"は弱さの証明ですか?」

戻って来ない日向と影山を探しにきていた巴の耳に入ってきた武田の声。

「君達にとって"負け"は試練なんじゃないですか?地に這いつくばった後、また立って歩けるのかという」

「君達がそこに這いつくばったままならば、それこそが弱さの証明です」

合わせたわけでもない、けれど二人は一緒に立ち上がる。自分たちは、決して弱くはないから。

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