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学校に走っていく途中、下校している生徒とすれ違う。ああ、もう委員会終わったのかな。っていうか高嶺さん本当に忙しいんだなぁ。何でもかんでも引き受けちゃうからなあ。いや、まあおれも勉強を教えて頂いている身なんだけれど。
段差を飛び越えて、下駄箱の前で脚を止めた。ええっと、高嶺さんの靴…くつ……は、まだある。ここで待ってた方がいいのかという案も浮かぶがすぐに消え去り、自分の靴箱をガチャッと開けて履き替えた。
誰もいない階段を一段飛ばしで上がっていく。窓から夕日が差し込んでオレンジ色が一面を支配している。こんなに静かなの珍しいなあ…テスト前だしこんなもんなのかな?なんだかあのときの体育館みたいだ。
視聴覚室、会議室、多目的ホール、思いつく場所を覗いてみるけど誰もいなかった。じゃあ、教室かな。今度はちゃんと一段ずつ階段を降りていく。
教室前の廊下にたどり着くと、ガラス越しに1組から順に見ていく。
高嶺さんはいつも何時に起きてたんだろ。あのユニフォーム型のお守りもそうだ。どんな思いで、IH予選を見てくれてたんだろう。高嶺さんの涙を見て、影山と狼狽え慌てたのは本当につい最近だ。
キュッキュッと靴が擦れる音が響く。2組を通り過ぎて、3組。探していた姿があった。
「高嶺さん!!」
「…日向くん…?どうして、」
「おれ、高嶺さんのことスゲーって思うよ」
高嶺さんが声に出す前にスゥっと息を大きく吸って、言った。
「いつも一生懸命で、いつだっておれ達のこと見ててくれて応援してくれてる」
青城の練習試合にはバスで吐いたおれを直ぐに介抱してくれたり、GW合宿のときもそうだ、試合中の声が力になってることとか、沢山。だから、だから
(そんな顔、しないでくれ)
思いつく限り伝えていくと、高嶺さんはどんどん目に水の膜を張っていくのが分かった。
「…わ、たし」
「うん」
震える唇が、まぶたが、涙を溜めて光る瞳が、彼女の気持ちを語っていた。なんでそんなに見当違いな感情を抱いているんだよ、思わず口にしたくなる言葉を飲み込んで巴を待った。
「ちゃんと、頑張れていたんだね」
心の底からの言葉だ。おれの声は高嶺さんにしっかりと届いた。否定することも拒否することもなく全部受け取ってくれた。今まできっと伝わっていなかった。いつも一歩後ろに立って見てくれているから。おれたちが、おれが、どんなに支えられてるか。
「っおれは!!」
伝えきれない感情が湧き出てきて、熱い内側から言葉が溢れ出す。
「頑張り屋で、優しくて、いつも見守ってくれてる高嶺さんが好きだよ!」
静かな教室に自分の声がやけに響いた。
……うん?躊躇なく思ったこと言ったけど、なにか、大変なことを、言わなかっただろうか。飛び出していった言葉を拾い、脳内で再生しようとすると高嶺さんが小さくわらった。零れ落ちる涙を指で拭いながら、おれを真っ直ぐ見て、うれしそうに。
「ありがとう、日向くん」
ストンとなにかが自分の心に落ちてきた。カチリとそれがハマり、今までのことがぶわっと溢れ出して、世界が新しくなる。
「わたしも日向くん、好きだよ」
「ん゛っ?!あ、え?!」
「いっぱい元気、貰えたね」
あ、そ、そうですよね。ですよね!!?今のはそういう好きって意味じゃないよね!?
「いっ、いつでも言って!おれ、高嶺さんのとこに補充しにいくから」
「…うん」
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