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「すごいね谷地さん、このポスターどこにいても目に入る」
「あ、ありがとう。こういうのはちょっとだけ得意なんだ」

手放しで褒めてくれる高嶺さんの表情は明るい。多分、今まで会った中でも一番。ポスターの写真を撮るとき、日向が大丈夫だと言った。影山くんは何のことか分からなそうにハテナマークを浮かべていたけれど、私は本当に安堵したのだ。

「この背景が本当にすごいね…烏野の体育館からオレンジコートに移り変わるのが、あと」
「まってまって高嶺さん、嬉しくて変な顔になるからやめてぇ…!」

それでも高嶺さんは感想をたくさん、きらきらした言葉を抱え切れないほど贈ってくれた。村人Bにはもったいないくらいに。これ以上は無理だと嬉しい悲鳴が上がりそうになったとき、手のひらにコロンと何かが置かれた。

「次に作るときは是非、谷地さんに図案を考えて欲しい」

そこには、小さな烏野のユニフォームが。あ、え。これ、高嶺さんが作ったの?ゆっくりと、そっとマスコットに触れる。ひっくり返すと背中には番号ではなく"HITOKA"と刺繍がされていた。

「工夫も何もない形だけど、先月皆に渡したものと同じものだよ」

あのね、私も何かを"つくる"ことが好きだからね。どれくらいの時間が、この手の中に収まっているのか。レイアウトとか魅せ方とかそんな計算されているものじゃなくて、何を伝えたくて、なにを思ってくれていたのか、その有り様がはっきりと分かる。わかるんだよ。

「正式な入部はまだ先でも早く渡したくて……、谷地さん?」
「ううっ…ありがっ、ありがとう…!!一生大事にするよぉ…!!」

ゴシゴシと涙を乱暴に拭いて、高嶺さんを見上げる。私より少しだけ身長の高い高嶺さん。決して大きいとは言えないその身体に、どれくらいの優しさが詰まっているんだろうか。

「っあの!!」
「?」
「巴っ、巴ちゃんって、呼んでもよろしいでしょうか!」
「…うん、もちろん。私も仁花ちゃんて呼んでいいかな?」
「ありがたき幸せ…!!」
「仁花ちゃんは、感情表現が豊かだね」

そうさせているのは紛れもなく巴ちゃんなんだけどなあ。指先で刺繍の文字を撫でる。嬉しいなあ。確かに巴ちゃんのためだったら、日向だって走り出すよ。私も、そうだ。

「どうしよう、カバンに付けたいけど落としたら腹を切って詫びるしかない」
「そこまでしなくても…何回でも作るから」
「だっ!ダメだよ!!このマスコットはこれしかなくて、最初で最後の現物なんだから!」

***

「オオッ」
「あれはっあれはもしやスカイツリー!?」
「いやあれは普通の鉄塔だね」

そう言った海の隣では黒尾が腹を抱えて大笑いをしていた。そして一頻り笑った後に抱いていた疑問を澤村へとぶつけた。
古豪の復活の代名詞といっても過言ではない部員がいない事を隠し通せるはずもなく、澤村は仕方なしに事実を告げた。

「え、じゃああの超人コンビ今頃補習受けてんの」
「ああ…まぁでも…」
「うおおお!?」
「!?」
「じょっじょっ…女子が増えとる…!!」

突如聞こえてきた大声にビクリと反応する澤村と黒尾。その声の主は音駒高校の山本でありマネージャーが増えている事への雄叫びだったようだ。

「巴」
「研磨さん。こんにちは」

高嶺に声をかけてきたのは相変わらずのプリン頭をした孤爪だった。

「翔陽はどうしたの…?」
「先日の期末試験で赤点を取ってしまって、補習を受けています」

あー…と、どこか納得した様子で頷いていた。中々戻ってこない孤爪を心配したのか、音駒のリベロである夜久もやってきた。

「久しぶり巴ちゃん」
「…お久しぶりです」

音駒とはメールで普段からやり取りしているため、名前呼びでも別段可笑しくはないが、いざ口頭で呼ばれると若干の違和感を感じてしまった。
すると無言でニコニコとする夜久を見て、孤爪が怪訝な顔で見ていたが、その次の瞬間その猫目をギョッとさせた。

「はいそんなキミにプレゼントー」
「え、」

上から何かが被せられ、視界が一瞬赤に染まる。導かれるようにそこから首を出せば、自分の身体が纏っているのはなんと音駒のジャージだった。

「…クロかと思ったら…コッチだったの…」
「黒尾じゃ警戒されるからなー!」
「夜久くんも、大概Sっ気あるよね」
「あの、これは…」
「はい、連行ー」

そのまま夜久に背中を押され、烏野から引き離された。
いつもは過保護な烏野も東京の新鮮さに、巴まで目が行き届いていなかった。

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