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日向と影山がいないという点で多少の攻撃力は下がるものの、決して烏野高校の調子は悪くなかった。菅原と東峰によるコンビも息は合っているし、澤村と西谷による守備もばっちりだ。
それでもこの梟谷グループで未だ1勝も上げられていない。
ピーッという笛の音に巴は烏野メンバーの試合に向けていた目を音駒へと戻す。夜久を中心としたレギュラー全員の守備力とチームとしての熟練感は相変わらずだ。けれど以前の音駒とは違う点、灰羽リエーフという新戦力の投入。
まだまだ技術面での課題は多いものの確実に彼の存在は音駒というチームに変化をもたらしていた。IH予選が終わってから春高予選までの間の時間は決して長くはない。リエーフというド素人の新戦力が春高予選までに使えるようになるかというのは正直に言えば賭けだ。それでも猫又は彼を新戦力として加えてきた。
――勝つ為の変化
日向影山という変人コンビによって烏野高校は大きく変化した。けれど、IH予選で及川率いる青葉城西高校には勝てなかった。そしてその青葉城西も牛若要する王者白鳥沢に敗北した。
音駒が変化しているように恐らく青葉城西も何か手を打ってくるであろうことは予想できる。ならば烏野も変わらなければならない事は必然。
それでも――私の仕事は、みんなを全力でサポートすること。
自分にそう言い聞かせるようにその言葉を頭の中で反芻した時、ギィィと体育館の扉が開く音がした。
「"主役"は遅れて登場ってか?ハラ立つわ〜〜」
黒尾の声を背に受けながら巴も日向たちへ視線を向ける。
日向と影山の合流によって、全敗記録をようやく止める事のできた烏野。二人の変人速攻に音駒以外の高校もようやく烏野を注視するようになった。
外が闇に包まれた頃、その日の練習試合は終了となった。巴は試合記録を残しているノートへと目を落とす。全敗記録こそは止まったものの、それでもこの梟谷グループの中で最弱なのは烏野で間違いなかった。それは恐らく選手である彼等の方が実感している事であろう。
***
「そういえば研磨」
「なに?」
「なんで高嶺さん、音駒のジャージ着てるんだ?」
合宿に参加した時から抱いていた疑問を孤爪にぶつける日向。少し離れた所で食事を摂っている巴へと視線を向けてから孤爪は答える。
「音駒のマネージャーになったから」
「…へ?」
「あ?」
「ええ!?」
「ちょっとそれはおかしくないですか?」
「そんなことないよ。ねえ、福永」
孤爪の回答に烏野の1年生たちが箸を止めた。孤爪に同意を求められた福永はコクリと頷いていた。
「この合宿中はマネージャーのいない音駒を仕方なく手伝うって話だったじゃないですか」
"仕方なく"を強調しながら言った月島に孤爪はムッと眉を寄せる。
「巴はうち(音駒)でいいって言ってた」
孤爪の言葉に今度は烏野1年生たちが眉を顰める。
「でも高嶺さんは烏野の生徒なんで、音駒のマネになんのは無理っすよね?」
「そうだよ、研磨!」
影山の言葉に同意するように日向が叫ぶ。
なんだなんだ?と食事をしていた他の人たちもそのテーブルへと注目した。
「とにかく、高嶺さんは烏野のマネージャーだからな!」
「音駒」
「烏野!」
「音駒!」
そのまま繰り広げられる言い合いは騒ぎを聞きつけた澤村と黒尾によって治められた。
「巴は烏野のマネージャーだから安心しろ」
「巴は音駒のマネージャーだからそんなムキになるな」
何故か主将同士で一瞬だけ火花が散った。
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