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「ん〜そうね〜。全体的に安定感が出て来たね〜〜」
直井の言葉に同意をした猫又。けれどその言葉とは裏腹に烏野へと鋭い視線を猫又は向けていた。
梟谷から打ちこまれた強烈なスパイクを福永がなんとかレシーブをする。そして研磨がボール下へと入った瞬間
「俺に寄越せェェエ!!」
その声に驚きながらもなんとかブロードを形にした研磨とリエーフ。その光景をタイムアウトをとっていた日向と影山はしっかりと見ていた。
そして烏野と音駒の練習試合。何やら妙な火花が飛んでいるようにみえるのは気のせいだろうか。
笛の合図と共に開始された試合。
「灰羽くんスゴイ!」
「俺も負けねえっス!」
日向と影山の変人速攻を止めてしまったリエーフ。
普通の速攻を使ってくるという研磨の予想は見事的中し、音駒は再び点を入れる。止むを得ず早い段階で烏野はタイムアウトをとった。音駒の面々に芝山と共にタオルとドリンクを配りながら少しだけ聞こえてきた烏養の言葉。
「取り敢えず音駒相手には東峰・田中のレフト中心で攻めてけ」
けれどそう言った烏養の顔に悩みが見えたのは何故なのか。烏養の指示は間違ってはいない。けれどそれでは何も変わらない。
ファーストタッチをとった影山のボールを澤村が二段で東峰へと上げる。けれどそのボールは少し距離が短かった。誰もが東峰が打つと思われたボール。その横から小さな影が飛び込んでくる。
東峰のボールを、日向が一緒に跳び上がって打とうとしたのだ。日向はアッと声を出し、東峰にぶつかって床に転がった。
「うわあああ!だだだ、ちょちょ、だいじょう」
「ごごごごめんなさいいい!ついボールだけ見てて…!すみません大丈夫ですか!?」
「俺は無傷だよ!」
「日向は大丈夫なのか!?」
「俺はなんともないです!」
「日向ボゲエエエエ!」
「おい気ぃつけろよ〜」
「どうしたって翔陽が吹っ飛ぶんだからな〜?」
「ちゃんと周り見ろボゲェ!何のための声掛けだタコォオ!」
「ハイ…」
日向は確かにボールしか見てなかった。でも、日向の”スパイクを打つ”という気迫に、東峰も”トスを奪われる”と恐怖心を少なくとも感じた。変化を求めないものに進化はない。貪欲に、自分こそが頂点であると――言え。
「なぁ影山―――おれ、目え瞑んのやめる」
「…あ?」
「今のままじゃだめだ。俺が”打たせてもらう”速攻じゃダメだ」
「…それができなかったから普通の速攻を覚えたんだろ。お前が何考えてんのか知らねぇけど、話なら後で聞いてやる。でも今すぐお前がそれをやるっつうならミスると分かってるやつにトスをあげるつもりはねぇ」
日向のその言葉が起爆剤になったのは間違いないだろう。日向だけでなく、部員全員の空気がガラリと変わった。
その後結局、烏野は音駒に負けてしまった。ペナルティをこなしながら部員たちの顔は難しそうな表情を浮かべていた。
「皆さんはここに居るチームの中で一番弱いですね?」
ペナルティを終えた澤村たちに顧問の武田が口を開いた。
「サーブを武器とする生川高校、シンクロ攻撃を始めとしたコンビネーション技を極めた森然高校、そして絶対的エースを要する梟谷学園、
勝つ為の練習を積んできた強豪たちから得るものは多いですよね」
ただの敵とみるか師とみるか。
***
体育館の扉に体を預けながら巴は静かに彼等の会話を聞いていた。
影山の言い分も日向の言い分もどちらも間違ってはいない。今のままでは青城戦の二の舞になる可能性は高い。
「あの速攻にお前の意志は必要無い」
そう言い捨てて体育館へとやってきた影山と巴はバチリと視線が合う。
しかし、影山は直ぐに視線を逸らしたところで巴の方から声をかけた。
「…影山くん」
「……なんすか」
「攻撃に繋ぐのはセッターだけど、攻撃するのはアタッカーだよ」
「…んなこと分かってる」
睨みつけるような視線を受けながら巴は影山を見つめ返す。
「烏養コーチも菅原さんも影山くんも、セッターだから分からないと思う」
「高嶺さん?」
「自分に何枚ブロックが張り付いてるか、どこが空いてるか。どこに打てば決まるかわかる瞬間がある、それを聞いたら影山くんは信じる?」
「何言って…」
「私はみんなだったらもっと、強くなれるって信じてるよ」
そう言った巴の強い眼差しに思わず影山は足を一歩後ろに引いた。
「…影山くんには、このまま元のコート上の王様に戻ってほしくない」
暫し無言が続いた後、巴は笑顔を浮かべた。
「たぶん、強くなる為にみんなは変化を選ぶと思うよ」
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