「────世話のかかる奴だ。」

不意に聞こえた、場違いな程の冷静な声。
それは思いのほか広がり、銀時と百合の耳にも飛び込んできた。
そういいながら立ち上がると同時に駆け出し、迅速に敵を薙ぎ倒して行く。

声の発信者を捜す瞳は、目前に居た戌威族が倒れこんだのを最後に一点へ注がれてた。

「逃げるぞ銀時、百合」

一同の前に降り立ったのは、編み笠を被り修行僧の格好をした…長い黒髪の男。

「おまっ…ヅラ小太郎か!?」
「ヅラじゃない桂だァァ!!!」
「ぶふォ!!」

銀時の失礼極まりない間違いに、桂と名乗る男が激しいツッコミを入れた。
間違いに対する指摘に、何故かアッパーカット。
桂の繰り出したそれは見事に銀時の顎を直撃し、彼は痛々しくもフラついた。

「てっ…てめっ、久しぶりに会ったのにアッパーカットはないんじゃないの!?」
「そのニックネームで呼ぶのは止めろと何度も言ったはずだ!!」

「こ、小太郎殿?」
「百合!」

桂は百合の名前を呼ぶや否やガバッと力強く抱きしめた。

「久しぶりだな!会いたかったぞ、百合!」
「ちょ…おまっ何やってんだ!!今すぐソイツから離れろ!!」

そんな話をしている間にも敵は次々と迫ってくる。

「話は後だ銀時、行くぞ!!」
「え…っ」

桂はそのままユリを抱き上げ、走り出す。

「行くぞ、じゃねーよ!とっとと百合から離れやがれ!!」
「何故だ!?オレと百合は幼き日より知った仲だぞ!?」
「そーゆー問題じゃねえんだよ!!?」

後ろから様々な非難の声が上がるが、結局最後まで百合が下ろされる事はなかった。
その様子を、誰かに見られているとは露知らずに…。

***

桂の手助けによって、追っ手から逃げ切れる事の出来た銀時たち。
一同は身を隠す為にと、桂に連れてこられた場所は、ビジネスホテルの中では名高いIKEDAYA
その一室では、新八らがテレビ中継に釘付けとなっていた。
それは現在、生放送中の臨時ニュース。
先程の騒動が早速も放映され、画面上には大きく「テロ」と浮かび上がっていた。
そして続け様に起こった、不運。
其処の監視カメラに、4人の姿がバッチリと残されていたのだ。

テレビ画面に写された、4人の顔。
事は自分が思ってたよりも深刻に進んでしまい、新八は顔を青褪めていた。

「ど、どうしよう…姉上に殺される」
「テレビ出演っ、実家に電話しなキャ!」
「神楽様、もう少しテレビから離れましょうね」
「なにかの陰謀ですかね、こりゃ…何で僕等がこんな目に、」

嘆く新八と、はしゃぐ神楽。
その片隅ではゴロ寝した銀時と、正座し皆をまとめようとする百合の姿が。
温度差が激しい室内。

「でも唯一、桂さんに会えたのが不幸中の幸いでしたよ。
こんな状態の僕らかくまってくれるなんて。
銀さんと百合さんの知り合いなんですよね?一体どーゆー人なんですか?」

新八に問われ、ちらっと目を見合わせた銀時と百合。
答えたのは銀時だ。

「テロリスト」
「はい?」
「そんな言い方は止せ」

第3者の声が聞こえそれと同時に、襖が開かれた。
現れたのは先程の男、桂と数十人の男達。
彼等の腰には其々、刀が差し込まれていた

「この国を汚す害虫“天人”を討ち払い もう一度侍の国を立て直す。
我々が行うは国を護るがための攘夷だ。卑劣なテロなどと一緒にするな」
「攘夷志士だって!?」
「なんじゃそらヨ」

嘗て、この国を天人の脅威から護らんと戦った侍達の存在。
その英雄達を、幕府は己の保身ほしさに、無情にも切り捨てた事実。
あの時の絶望、屈辱、裏切りを、けして忘れはしないと…

今も尚、剣を握り続ける人達の実態。
今も尚、天人をこの星から追い出そうと戦い続けている者達の、存在。

世を彼等を、攘夷志士と呼ぶ…。

「その後、主だった攘夷志士は大量粛清されたってきいたけど…まだ残ってたなんて」

新八の言葉に、それまで静かにしていたユリの表情が僅かに曇ったが
それに気づける者は銀時でしかなかった。
銀時は視線を桂に移し、胸の内を吐き出すように口を開いた。

「…全部テメェの仕業か、ヅラ。
最近のテロ騒動も、今回の事も」
「……例え、汚い手を使おうと、俺達には手に入れたいモノがあるんだ」

銀時の言葉に、桂は揺らぎを見せなかった
百合に視線も寄越さずに、決意の固さを露わに刀を握っていた。
桂は握った刀を銀時に差し出すように、一歩前へ踏み出た。


「───銀時…そして百合、この腐った国を立て直す為…再び俺と剣を取らんか?
お前達は共に、「白夜叉」「雪刀(ゆきふね)」と恐れられた侍…その力を再び貸してくれ」

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