とりあえず、刑事たちが言っていた予告時間まで暇を潰すため蘭たちは難波布袋神社でお願い事したり、おみくじ引いたりした。

 「あ、百合、大吉じゃん!」
 「凄い!見せて見せて〜」

 百合が引いたおみくじを、勝手に覗き込んでいた園子は蘭たちにも聞こえる声で言う。
それに和葉達も反応しおみくじを覗き込む。

「待ち人…恋人と再会します、だって!」
「それって、新一君のことじゃない?」
「へえ、よかったやん!今度、私にも会わしてぇな!」
「……恋人じゃないよ」
「照れんなって〜!」

本人近くにいるってのに何ちゅう話をしとんじゃ、と彼女たちの話を聞いていたコナンが苦笑いをこぼす。

「さて、問題は午前3時までどうやって時間を潰すかやな…。
取りあえず何か、うまいもんでも…」

平次はそう言いコナンの方を見ると、彼は先ほどとは一転して、何かを考え込むように真剣な表情をしていた。
それを見過ごすわけにはいかない。

「和葉!お前、その3人案内したりや!」
「何で?皆で行けばええやん!」
「男は男同士がええんや!な、コ、コ…コナン、君?」
「うん!」

ボソボソと何か喋っていると思えば、男2人は神社をスタスタと去っていった。
その後ろ姿を見つめる女4人。

「なんか妙に仲良いのよね…あの二人」
「いいじゃない!女は女同士!浪花のイケてる男を見つけて、ご飯を奢らせちゃおうよ!」
「ほんなら引っかけ橋にでも行ってみる?」
「賛成!こっちにはこのクールビューティー百合様がいるんだから、幾らでも食べられるわ!」
「いや、それは百合には荷が重すぎるわよ、園子…」

暴走しがちな園子を止めるのは、いつだって蘭の役目である。
一方で男衆は――

「工藤」
「ん?」

先ほど引いたおみくじの話をしていた。

「さっき引いたおみくじどーやった?」
「んなもん、まだ見てねーよ」

平次に急かされ、コナンは仕方ないといった感じにポケットから紙を取り出して広げた。

「小吉かぁ…中途半端なもん引きよったな。
これやったらキッドとの勝負、勝てんのか負けんのか分からんやんか」
「旅行…秘密が明るみに出ます、やめましょう…。」

先ほど百合が引いたおみくじには「恋人と再会します」と書かれてあった。
確かに自分は彼女と恋人関係でないにしろ、嫌な予感しか考えられない内容である。

「いよいよ正体ばれてもうたりして」
「ま、まさか…」

コナンは冷や汗をかいて否定するが、平次は意地悪そうな笑みを浮かべる。

「ここのおみくじ、よぉ当たるからなー」
「え、嘘!?」
「ホンマ!それにオレから見ても、あの嬢ちゃんの頭のキレは半端ないからなー。
自分で勝手に推理して当てるんちゃうか?」

そこまで言われるともう何も言えなくなってしまう。
百合はただの不思議っ子ではなく、ああ見えて頭の回転力や勘の良さは折り紙つきだ。
コナンは先行きを考え、頭を抱えた。

その後、平次とコナンは予告状について考えながらも、時間は過ぎて行くだけであり、空が暗くなり始めた頃、鈴木近代美術館に戻って来た。
入り口近くで、会長の秘書の西野が一人の女性と話し込んでいるのが見えた。

そのときだった。
平次の携帯の着信音が鳴り、相手は和葉と出ていた。

「どないしたんや、何かあったんか?」
『あー実はなぁ、百合ちゃんが急に平次と話したいゆーてな…』

何故急にユリが自分に話したいと言ってくるのか、意味が分からなかった平次だが、ガチャガチャと電話を持ち返る音が向こうから聞こえてきた。
どうやら電話相手が和葉から百合へと変わったようだ。

「何や話って」
『……今、7時13分』
「はい?お前は時報か」

何を言いだすかと思えば、現在の時刻をわざわざ伝えてくるユリ。

『夜中の3時が"L"なら…今は"へ"だよ』
「おい、だからそれが何やっちゅーねん」
『じゃあ、あとはよろしくね』

やはり不思議っ子が考えることは分からん、そう思ったが、
百合は最後にそれだけ言うと平次の返事も聞かず、一方的に通話を切った。

「マイペースすぎるやろ」
「百合か?」

平次の反応を見てコナンが聞いてきた。

「あぁ、突然、夜中の3時が"L"なら今は"へ"やと」
「"へ"?」

そして平次は自分が付けている腕時計を見て笑う。

「おお確かにな。あの嬢ちゃん、おもろいこと言うやんけ。
今、7時13分、7時20分になったら完璧な“へ”やな」

平次が笑いながらそう言うと、コナンはハッと何かに気づき叫んだ。

「服部!キッドの予告した時間は午前3時じゃなく、午後7時20分だ!」
「なんやて!?」

コナンの言う通り、"へ"は予告状にあった"黄昏の獅子から暁の乙女へ"の12番目の文字。

「どこ行くねん、工藤!」
「大阪城だ!お前はエッグを見張ってろ!」

スケボーを取ったコナンは走り出す。
すると、丁度そのときポツリと一粒の雨が落ちた。

「ん?雨か…。天気予報は確か晴れ…あっ!?」

雨を見て平次も何か気付いたように声をあげる。

「待てや工藤!天の楼閣は天守閣やない!通天閣や!
通天閣のてっぺんはな…光の天気予報なんや!」
「なにっ!?」


――通天閣の一番上の鉄骨に白いマントがなびいていた。

「レディース・アンド・ジェントルマーン!!!」

その人物――怪盗キッドは大声で叫んだ。

「さぁ、ショーの始まりだぜ!」

そして手に持っていたリモコンを押した。
大阪城が急に明るく――花火だ。
無数の花火が大阪城の周りで上がり始めた。

「服部!通天閣はどっちだ!」
「あっちや!あっちは花火があがってへんな…」

平次の指差した方では花火は上がっておらず、逆に静かな空が広がっている。

「大阪城で花火を打ち上げたのは、通天閣から目をそらせるためだ!
でも何故なんだ…なぜ奴は通天閣に…」
「くそっ!今から通天閣へ行っても間に合わへんな!」

悔しそうに自分の手を拳でたたく平次。

「ここでキッドを待ち伏せるんだ!」
「おう!」

二人が意気込んだところで西野が走ってやってきた。

「西野さん、エッグは今どこに?!」
「それが…、中森警部がどこか別の場所に持って行ったらしいんだ…。」
「な、何やて!?」

コナンたちが驚愕の表情を隠せないまま、突然辺りが真っ暗になった。大阪中が停電になったらしい。
皆が困惑に包まれているなか、コナンはそこでまたも何かに気づき、スケボーに乗って走った。後ろにいた平次の制止の声も聞かず。

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