4
キッドの狙いは自家発電だった。
変電所を壊して停電にすると、自家発電に切り替えるところがある。
それはホテルや病院などの公共施設、そしてその建物以外で電気がついてればそこにエッグが隠されている、ということだ。
その明かりがつくのを見渡すのに、通天閣は絶好の位置取り。
更に、警部たちはキッドに見つからないよう警備は手薄。絶好の盗み時である。
結果キッドはエッグを盗み、スケボーでそのキッドを追うコナン。
途中からは平次のバイクと共に追跡する。
だが、追跡中、トラックと接触しそうになり平次が転倒。
平次に諭されコナンはキッドを追う。
パラグライダーが飛ぶには向かい風が理想的。
キッドは大阪湾に向かって高度を下げているあたり、地上へと降りるのだろう。
一方で――
無事、エッグを盗み出せたとおもわれたキッドだが
そのキッドへと射撃のための標準レーザーを当てる者がいた。
空を飛んでいるキッドはそれに気づかない。しかし、一人の少女が叫ぶ。
「キッド!逃げて…っ!!」
「……お前、」
少女――百合に気づいたキッドは彼女へと顔を向ける。
何故ここに彼女が、そう思ったと同時だった。
ガンッ!
何者かが撃った銃弾の一発がキッドへと命中した。
その数分後、大阪湾の側に着いたコナン。
しかしその場にいた予想外の人物に驚きの声を上げる。
「百合ねーちゃん!?」
「…コナンくん」
しゃがみ込んでいる百合の手には傷ついた1羽の白い鳩と、木箱に入っていたと思われるインペリアル・イースター・エッグ。
そして、割れたキッドのモノクル。
「…キッドが…海に落ちたかもしれないの…」
「え!じゃあ、やっぱりさっきのは……」
コナンが言う"さっき"とは、橋の上に見えた人影のこと。
その後一先ずコナンたちは警察を呼び、捜索してもらうことになった。
▽▲▽
警察の捜索の甲斐もなく、キッドの生死ははっきりしないまま、
コナン達は朝一番で鈴木財閥の船に乗り、エッグに傷がないか精密な検査をするために、東京に戻ることになった。
「私の曽祖父は喜市といいまして、ファベルジェの工房で細工職人として働いていました」
キッドの予告のその時間、美術館に押しかけてきていたという香坂夏美の前にエッグが置かれ、それを取り囲むように一同は座って話を聞いていた。
彼女の曽祖父は、ロシア人の女性と結婚をし、ロシア革命後に日本に戻ってきたらしい。
彼女の祖父と両親は五歳のときに交通事故で死亡し、育ての親であった祖母も先月亡くなってしまったとのこと。
コナンはそれを聞いて、一人の少女を見やった。
銀色の瞳を持つ彼女と似たような境遇だったのだ。
「祖母の遺品を整理していましたら、曽祖父が書いたと思われる、古い図面が出てきたんです。
真ん中が破れてしまっているんですが……」
そう言って広げられたのは、メモリーズエッグの図面であった。
コナンの言葉により、もとの図面にはエッグが二つ描かれていることが判明する。
しかしそれだけですっきりしないとでも言うように、エッグを手にとって眺めるコナンの手元から、一枚の小さな鏡が零れ落ちた。
「西野さん、明かりを消して!」
叫ぶコナンの声に従って、部屋の照明が落とされる。
鏡に反射した光が壁に当たったとき、その場にいた全員が息を呑んだ。
そこにはくっきりと、立派な城の絵が映し出されていた。
「沢部さん、このお城……」
「はい、横須賀のお城に間違いありません」
この横須賀の城に、香坂喜市が作ったもうひとつのエッグが隠されている可能性が高いのでは、
と小五郎が推理した途端に、集まっていた人々のまとう雰囲気が変わったのを、コナンは見逃さなかった。
結局、夏美に彼らのエッグを狙う意図は伝わらなかったのか、彼女は彼らが同行することをあっさりと認めてしまい、一行は東京に着いたら横須賀の城に向かうことが決まったのだった。
「…百合ねーちゃん」
後ろから掛けられた声に、百合はゆっくりと振り向いた。
そこには僅かに眉を顰めたコナンがこちらを見上げていた。
あえて同じ視線にしゃがむことはせず、小さく首をかしげてみせる。
「なに?」
「あ、その、大丈夫?」
「……」
「何か考え込んでたみたいだったから…」
苦笑しながらも、心配の声をかけてきたコナン。
そんな彼を百合はジッと見つめる。そしてポツリと呟いた。
「…キッド」
「え」
「あの人、無事かな…」
いつの間にか百合の視線はコナンではなく、顔は少しだけ下を向いていた。
彼女なりに心配しているのだろう。キッドは確かに泥棒ではあるが、それでも一人の人間だ。
特に彼女の場合、キッドが撃たれる直前まで見ていたため、無意識に責任を感じているのかもしれない。
「キッドは多分、得意のマジックで姿をくらませただけだよ!
だっていっつも刑事さんたちから上手く逃げてるじゃん!だから大丈夫だよ、百合ねーちゃん!」
まるで百合を安心させるかのように、コナンは笑顔でそう言った。
「じゃ、ボク先に部屋行ってるね!」
コナンは足早に自室へと向かった。
しかしその表情は、悔しそうな…苦しそうな顔をしていた。