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ビッグジュエル、またの名をレディースカイ。
「うわ〜!」
「この青い色がなんとも言えないのよね〜」
「お星さまみたーい!」
皆は次郎吉のレディースカイに関する説明を聞きつつ、その美しさに酔いしれていた。
「…綺麗」
「百合姉ちゃん、もっと近くで見たら?」
「ありがとう。でも…またあとでもいいよ」
コナンとユリが話をしていると、小五郎がなんの罠にかかったのか、数メートル先へブッ飛んだ。
「え、おっちゃん!?」
「小嶋くんが、あの装置に触れたのよ。キッド対策、ってことじゃないの?」
しかし、まともにパンチを食らったにも関わらず、至って元気な小五郎はブッ飛んだ原因である元太に掴みかかろうとした…が。
「ぴぎゃあああっ」
あえなく失敗した。いよいよ伸びてしまった小五郎に呆れつつ、コナンは辺りを見回した。
(なるほど、あのセンサーか。にしてもおっちゃん、引っかかり過ぎだぜ)
「だが…もし奴が、こうしたらどうする?」
中森警部は手を拳銃のように見立て、次郎吉をガラスケースの前へ誘導した。武力行使で脅迫されれば、その手でケースを開けなければいけない、ということを言いたいらしい。
「キッドはそんなことしないと思う」
「そのお嬢ちゃんの言う通りじゃと思うが…そのときは、こうするまでじゃ」
次郎吉がピピッ、とパネルと操作する―と、突然、中森警部が床下に落ちてしまった。彼の立っていた部分の床が、抜けたのだ。次郎吉が再度パネルを操作すると、先ほど抜けた床がもう一度開いた。中では警部が騒いでいる。
「くそーっ、なんて仕掛けだ!」
(確か、さっき…)
次郎吉が操作していたパネル。押していたのは、4と7と♯だった。ここの床は5×4のマスで構成されている。中森警部の"ただのガラスケース"発言も、小五郎の体を張った実証によって覆された。中森警部以下警察官らは、作戦の練り直しだと言ってスカイデッキを去った。
「いやー面白いもんを見せてもらった。おかげさんで良いルポが書けそうだ」
すると藤岡は奇妙な笑い声を上げつつ煙草を取り出した。浅野がそれを制し、喫煙室で吸うよう促す。彼は案外素直に、浅野の言葉を聞き入れた。行きがけに小五郎を誘っていったが、気力という気力を削がれた彼はその誘いを断った。高所恐怖症の人間が、飛行船に乗り、顔面にパンチを受けて吹っ飛び、電撃を喰らう。尋常の沙汰でないことは、確かだろう。
***
その後、スカイデッキでは一時解散となり、百合は蘭、園子と共にお手洗いへ来ていた。そこで園子が百合にあげた絆創膏の話を始める。
「……ナニこれ」
鞄から絆創膏を取り出すと、それには、小さく"新一LOVE"と書かれていた。
「園子ちゃん…」
「えっへへー。いい落書きでしょ」
「園子、ナイスよ」
「蘭ちゃんまで…」
「いいじゃない、お似合いのカップルなんだから」
「そういう関係じゃないよ」
百合は基本淡泊でマイペース。今までに異性にそんな感情を抱いたことはなく、どころか無縁だったといってもよかった。それ故、幼馴染の彼への感情などまだ自分で理解していない。その相変わらずの彼女に、蘭と園子は呆れたような顔をした。
「百合、あなた…」
「ほんとぶれないね」
「…自己分析とか、状況理解は得意だと自負してるけど」
「それが対新一で、恋愛沙汰となると…」
「こうなるのね…」
妙に納得し合っているらしい蘭と園子に、百合は疑問符しか浮かばない。とそこで、手に持っている絆創膏(園子の落書き付き)を見て、重要なことを思い出した。
「あ」
「ん?どした?」
「これ…飛行船に乗るとき作業員の人にあげちゃった」
乗船する際、歩美が階段で躓いたのを、受け止めてくれた男性作業員。彼が肘のところを怪我していたため、絆創膏をあげたのだ。
「…はぁ……」
「小さいからわかんないって!」
「そうそう!」
なだめる二人に、百合はまたため息を吐いた。