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「ど、どういうこと…」
「……」
「そう…怪盗キッドの正体は、俺だったのさ」
どうして、こうなった。あたふたとする蘭とは対照的に冷静な百合。それから、バーテンダーの格好をした工藤新一の顔の人。
事の発端は数分前。
もう一度、ゆっくりレディースカイを見たいと蘭が言うので、百合も同行することにした。園子は真にメールをするといって別行動となった。そして、スカイデッキに行くと…バーテンダーが、先客としてレディースカイを眺めていた。百合たちに気づくとバーテンダーは休憩中に抜け出して、宝石を見に来たのだと告げた。
「それでは、僕はこれで」
一礼し、立ち去ろうとする彼――を突然百合が掴んだ。横を通り過ぎる彼の腕を離すまいと両手で掴み、じぃっと銀の瞳が相手を射抜くように見つめる。そして、今に至る。
「え…なん、で…」
現状に気づいた蘭がバーテンダーの腕に貼ってある絆創膏を凝視する。何故、飛行船に乗る前、別の人間に渡した筈の絆創膏、しかも特徴のついたソレを彼が持っているのか。
「あなたもしかして――「すみません、人違いでした」
蘭の声を遮って、聞こえてきたのは透き通った声。百合だ。しかし、今聞こえた言葉にその場にいる蘭も含め、彼の方も驚いていた。
「行こう、蘭ちゃん。知り合いの人に似てたから、私が早とちりしちゃっただけよ」
「百合!?違うわよ!この人は――」
すると今度はそこへ、エレベーターの扉が開き、中森警部らがやってきたのだ。蘭はそれに気づくと中森警部に手を振っている。
「こんな逃げ場のない飛行船に乗ったのが運のツキよ…観念なさい!」
「飛行船じゃねえ…UFO、だろ?」
「…っ」
「なによソレ」
その話は百合以外、"彼"しか知らない筈。蘭は意味が分からないと言うように怪訝そうな顔だ。
「それは…新一しか知らない話」
「え!そうなの…!?」
結局、蘭はキッドの正体をあやふやにしたまま、彼と百合の腕を引っ張って中森警部の前から去った。バーテンダーに戻ったキッドに、"信じてない"と告げた蘭。しかし実際は、かなり新一=キッド説に傾いてるようだった。そうじゃないはずだ、と思いたいその気持ちだけが、反論している。
そこへ藤岡が、突如現れて蘭の両腕を握った。当然、蘭はすぐに飛び退いて戦闘態勢に入る。
「タ、タイム!ターイム!」
「藤岡さん!?」
「やぁー失敬、失敬。さすが空手の関東大会チャンピオンだ。良い筋肉している。はっはっは」
藤岡は笑いながらその場を去っていく。一体何がしたかったのか、よく分からない男である。しかし百合は何故か、蘭の腕、藤岡に握られた彼女の二の腕を見つめていた。