二人はひとまず、診察室の奥にある、病室にて隔離されることになった。このダイニングも閉鎖することになる。

 「子供達にもこのことを知らせておかんと…」
 「そうだな………!!」

 感染したと思われる、ウェイトレスの女性。彼女のくしゃみが、さっき元太にかかっていたのだ。飛沫感染する細菌で、発症しやすい子供…。一抹どころか、多大な不安を誘う情報ばかりだ。コナンはこっそりと抜け出し、元太らを探しに行くことにした。

 ***

 立ち入り禁止扉前。扉を開ける。いわば飛行船の内部であるそこは、薄暗く、辺りは鉄の柱やら柵ばかり。

 「元太!」
 「あーっ、コナンくん!」
 「オメー、体は大丈夫か!?」

 元太の健康をチェックする。今のところは、感染は見受けられない。元太達にも現状を説明し、キャビンに戻ろうと振り返る。

 「隠れろ…!」

 コナンの声に、全員がその場にしゃがみこむ。視線の先には、何やら怪しい人物がいた。

 「ここでじっとしてろ!」

 コナンは姿勢を低く保ったまま、より相手が見える位置まで移動した。

 「何してんだ?こんな時に…」
 「誰ですか、あの人…」
 「キッドの仲間か?」
 
 言いつけに懲りず、元太らはコナンのすぐ隣に来ていた。

 「いや…違う。奴は恐らく“赤いシャム猫”の…」

 そこまで言いかけて、コナンは顔色を変えた。

 「まずい…まずいぞ」

 突然立ち上がって、近くの階段を少し上る。

 「しまった!」

 微かに、空高くからヘリの音が聞こえてきた。ヘリの音と共に、外から入ってきた複数の人間。コナンらのいる位置からでは、裸眼では見えにくい。しかし喜ばしい客でないことは確定され、そもそも奴らの格好が武装犯のソレだったのだ。

 「奥へ行け!」

 メガネで侵入犯を観察していたコナンは、子供達に反対方向へ走るよう促した。

 「ガスシャフト横の梯子を登るんだ!」

 コナンの指示に従い、先に子供達が梯子を登る。その後に登り、下を覗いたとき、侵入犯の一部がちょうど梯子の下へと来ていた。


 (あの子達、遅いわね…)

 コナンが子供達を探しに向かい、ダイニングでは重苦しい空気が漂っていた。
 哀は客観的に状況を把握することに専念し、子供らしく怯えている演技をしていた。

 「動くなっ!」

 突然、ダイニングの扉が荒々しく開け放たれる。服は真っ黒、手には銃という、全くもって遊覧飛行には不似合いな連中が入ってきた。

 「アンプルは見つかったか?」
 「赤いシャム猫…」

 一同は凍りつく。彼らが、この飛行船に細菌をばら撒いたのだとすれば、ここに来た目的は算段がついてしまう。

 「この船内に爆弾を仕掛けた…」

 鼻に傷がある男が静かに告げる。どうやら、顔を見られることは厭わないようだ。次郎吉の愛犬、ルパンが吠えて、警戒を顕にする。

 「これ、ルパン!おとなしゅうせい!」

 そのとき、銃声が響いた。銃弾はビデオカメラを貫く。

 「きゃあ!」

 西谷が悲鳴を挙げ、いきなりの銃声に全員の顔が青くなる。今の様子をビデオカメラで撮ろうとして、バレたらしい。

 「おとなしくしろと言ったはずだ…」

 男は銃をこちらに向けながら、仲間と連絡を取る。口ぶりと、連絡している人数からして、結構な数の仲間がいるらしい。飛行船を全て、鎮圧されてしまった。立派な飛行船ジャックだ。哀は舌打ちしたい気分になった。

 「船内放送でクルー全員ダイニングに集めろ!」
 「くっ…」
 (このことを、工藤君達に知らせないと…)

 今や全ての解決の望みは、彼等にしかない。彼らが何も気づかず、ここへ戻ってきてしまったら、解決は一気に遠のくだろう。少なくとも今は、コナンが自由に動ける状態でなければならないのだ。

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