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「…白煙!?」
飛行船から出ると、そこには真っ白な煙がモクモクと立ち上っていた。コナンは咄嗟に口元を服の袖で覆う。煙の発生元を辿り、下を覗き込むと、そこはスカイデッキだった。犯人グループの一人が、発煙筒から煙を出しているらしい。
「…どういうことだ?」
コナンは伸縮サスペンダーを飛行船にくくりつけ、飛行船の側面を伝って地上を見下ろした。
「…もうすぐ奈良ね」
「あぁ。飛行船が煙吐いてるんで、奈良の人たちはぶったまげるだろうな…」
「いや、たまげるだけじゃない!パニックだ!」
コナンが戻り、サスペンダーをしまう。キッドがきょとんと首を傾げた。
「犯人が、ネットに飛行船のことをバラしたんだよ。今頃、街中の人が避難させられて――」
「なるほど…まあ、奈良がそうなったとしたら…泥棒にとっちゃ大ラッキーだけどな」
「バーロ!人がいなくなっても、今はどこもセキュリティが…」
コナンが言いかけて、止まった。
「まさか…だから奈良に?」
「…かもしれねーな」
(でも、だとしたら…何であいつ等、こんなことの為に細菌を…!?)
謎は謎を呼ぶ。ひとまず、コナンは船内へ戻ることにした。流石にここは百合は危険ということで、キッドの説得もあり、外に残ることに。
「アンタ、気づいてんだろ?」
「……」
外でキッドの隣に座るユリ。突然の投げかけにも黙ったままだ。
「あのねーちゃんがオレがキッドだと気づいたとき、アンタも気づいてた筈だ。寧ろ一番最初にな。だから、咄嗟に掴んできた。違うか?」
「…何となくだよ」
自分の心を読まれないようにか、百合は真っ直ぐ前方を見つめ、隣にいるキッドには見向きもしない。しかし、次の言葉に目を見開く。
「あと、アイツが工藤新一だってことも気づいてんじゃねーのか」
江戸川コナンが、本当は工藤新一。それは誰に言われたわけでもない、否、言われたとしても信じがたい出来事。それなのに百合は自ら気づいていた、そうキッドは言いたいらしい。
「普通に考えたら、どこの世界に小学生にテロリストを任せる高校生がいるんだよ。つーかアイツも隠すんなら、もっと上手くやれよな。バレバレだっつの」
確かにそうだった。迅速な爆弾処理、大人顔負けの推理力、そして危険なテロリストたちに立ち向かう勇気。どれを取っても小学一年生にできることではない。
「……秘密にしてて」
「秘密?」
「たぶんあの子も…あなたと同じ、少し勘づいていると思う…。でも、それでも、必死に隠そうとしてるなら……言えない、何か…大きな理由があるってこと。だったら、裏切りたくない。友達に嘘ついてでも、隠してる彼を……私が、裏切るわけにはいかないから」
――だから気づいてないよ、ってそう言うしかないの。
***
バァンッという盛大な銃声が鳴り響いた。スカイデッキ入口のエレベーターに視線を遣ると、そこにはコナンが第3Rでぶちのめした男がいた。ようやく体力を回復させたのか、明らかに個人的恨みを持った目で銃を打ってくる。銃弾を交わすようにして走り、ふとコナンが立ち止まると、ある方向を示して声を上げた。
「あーっ!!」
コナンが示す方向に、男は咄嗟に銃を向けた。その方向には、例の電流センサーがあった。
「ぎゃーっ!!」
男は黒焦げになり、その場に倒れた。立ち上がることはもうない。
「おいおいマジかよ…」
コナンは声のほうを見て振り返る、そこにはキッドがいた。斜め後ろには百合もいる辺り、もう安全だと読んだのだろう。
「なに、これ?」
「次郎吉さんがオメーのために作った仕掛けだよ」
「なーるほど。俺が逃げようとして空に向かってワイヤー銃を打てば、センサーが反応して電撃が降ってくるわけね。あっぶねー!」
「って言うかお前、ずっと上にいたのかよ!?」
「だって百合ちゃん守ってやんなきゃいけねーだろ」
「私…一人でも大丈夫だった」
そんな休憩も束の間。三人は、ほぼ同時に気配に気づき、振り返った。それが合図であったかのように、リーダーの男は銃を乱射し始めた。銃弾を避けるため、キッドは百合を抱えてジュエリーボックスの裏へと隠れ、その中でコナンがサッカーボールを射出する。スニーカーの威力もフルパワー。
「喰らえっ!」
見事蹴り上げられたボールは虹色に輝き、猛スピードで男の顎を直撃した。そのままエレベーターのほうまで体を吹き飛ばされる。
「うぐ、ぐ…がっ」
気絶した男を横目に、ボールを蹴った反動で座り込んでいるコナンの隣に百合は屈んだ。
「怪我は…っ?」
「あ、ユリ姉ちゃん」
「すげー」
キッドも賞賛の声を漏らしながら、コナンの隣に屈んだ。そして何かを取り出す。
「あ?」
「戦士の、勲章…だな」
手に取ったそれを、コナンの擦りむいた頬に貼り付ける。
「……あ」
絆創膏に気が付いたのか、百合はコナンの顔を両手で挟み込むようにして、絆創膏の貼られた頬をぐいっと自分の顔に近づけた。
「なっ///」
「動かないで」
「何を…っ」
コナンの頬が染まっていくに従い、キッドの顔はどんどんニヤついていく。百合の視線には絆創膏。そしてその絆創膏には…"新一LOVE"と、書かれていた。
「やっぱり」
「いいじゃねーか、気づかねえって!」
「そういう問題じゃない」
「…おい、何の話を」
「気にしないで」
いよいよコナンの顔が、はぁ?といった表情になる。
「…気になんだろ普通」
「ダメ、それ以上気にしたら…」
「「気にしたら?」」
コナンとキッドの声が重なった。
「……コナンくんのこと、襲うから」
「「……はぁああ!?」」
彼女の言動は相変わらず不可思議なり。