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「ってか、なんでお前らまで乗ってんだよ!?」
「だって人が自殺した事務所でコナンくんと二人っきりじゃ心細いもん!
そもそもお父さんこそ何で乗ったよ!?」
「お、俺は圭さんが心配で…っ!」
「何よ圭さんが美人だからってノコノコ着いてきちゃってさ!」
「……せまい」
既に安室の車に乗ったことがあるユリは助手席が定位置だったため狭さなどは感じなかったが、今日は違う。
助手席は樫塚圭が座り、後部座席には小五郎と蘭、百合、そして百合の膝の上にコナン。
ぎゅうぎゅうだけれどなんとか無理やり乗ることはできた。
ただ事務所を出てからずっと黙り込んでいるコナンと違い、両端を挟む蘭と小五郎の言い合いと窮屈さから百合の顔は終始不満そうだったが。
「いいマンションですなぁ……」
その後、無事に樫塚圭の家にたどり着いた。小五郎の言う通り、たしかに綺麗な物件だ。
エレベーターで上にあがって目的の部屋の前まで樫塚圭を送る。
誰も待ち伏せていないことがわかると樫塚圭は「この辺で結構ですよ」と部屋の鍵を取り出した。
だが、それなら帰ろうかという雰囲気になってきた中でコナンが声をあげた。
「あ〜っ!トイレに行くの忘れてたァ!もれちゃうよォ〜!」
お姉さん、トイレ、お願い、と懇願する樫塚圭は鍵を開けてコナンを中に促した。
扉が開いた瞬間ほんの少しだけ体を固くしていたコナンはいちばんに家の中に入って、彼女に言われた通りトイレへ向かった。
その後ろで小五郎と安室までトイレを借りたいというのだから、百合と蘭は呆れると同時に少し恥ずかしくなった。
そんなこんなで半ば無理やりではあるけれど樫塚圭に続いて家の中に入りリビングに行くと、机の上がやけに散らかっていた。片づけをしていないようだ。
百合は蘭と一緒に机の上を片付けを手伝う。
小五郎が何気なくつけたテレビのニュースでは既に事務所の事件が報道されていた。
『本日午後四時頃、米花町五丁目の毛利探偵事務所のトイレの中で男性が拳銃自殺をするというショッキングな事件が起こりました』
「やばっ!お母さん心配してるよ!」
そう言いながら蘭は電源を切っていた自身の携帯を取り出す。
すると電源をつけた途端、着信音が鳴り出した。
「もしも――「なんで電源切ってんだよ!心配したじゃないか!」
蘭に電話をかけてきたのはニュースを見て心配してくれた世良だった。
だが、通話は途切れ途切れになり、安室は電話が繋がりにくいのは部屋に盗聴器が仕掛けられているからと考える。
そして圭に、全室回って盗聴器の設置場所を突き止めていいかと確認し、圭は片づけるから5分待ってほしいと伝えた。
――内容すっ飛び。
昴が運転する車に乗ってコナンの救出に向かう阿笠と灰原。
小五郎と蘭、百合も安室が運転する車でやせた強盗犯の自宅に向かい、蘭から話を聞いた世良もバイクに乗って安室の車の後に続く。
「なにぃ!?小僧を乗せた車が大石街道を北上してるだと!?」
「お、大石街道ってこの道じゃない!!」
「車は!?青い小型車…ナンバーは?!」
すると運転していた安室の目に映ったのは、対向車線を走る青い小型車だった。
「何かに掴まって!」
そう言うや否やスピードを変えずに車を一回転させるという、もの凄いドライバーテクニックを見せた。
そうして先頭を昴達の車、次に安室の車、後ろを世良が運転するバイクで追いかけるという、下手した大事故にもなり兼ねないカーチェイスが始まっていた。
「蘭さん、左のシートベルトを外して右側の毛利先生にしっかり掴まって。
毛利先生、先生はそのまま右側のシートベルトを締めていてください…娘さんを離さないように」
「え?」
「私、外すんですか?」
「百合さんはシートベルトを外してこちらに」
「……?」
3人が不思議に思いながらも言われた通りに行動し、百合がシートベルトを外した途端、安室は右手にハンドルを持ちながら左手で力強く百合の肩を引き寄せる。
「わ…っ」
「な、何やってんだ!?」
すると百合が安室の座る運転席に移動したと同時に、ハンドルを利かせ車をそのまま無理やり青い小型車と衝突させた。
安室の指示でそれぞれ車の右側に寄っていたため全員怪我なくなくすんだが、横回転した車の左側を小型車と衝突させることで逃走を阻止したのだ。
「……びっくり、した」
「怪我はありませんか?」
「はい…安室さん守ってくれた、から」
「良かった、少々危険でしたが…これしか策が思いつかなかったので」
「おい、いつまでくっついてんだ?」
二人の後ろから怪訝そうな声を出す小五郎。
例え事件の為とはいえ、年頃の娘と男が抱き合っている姿は癇に障るようだ。
それを聞いて苦笑交じりに弁解の言葉を述べている安室からゆっくりと離れ、百合は蘭に続いてコナンの安否を確認しに向かった。
コナンが蘭に説教をされている中、百合はコナンを助けてくれたという真澄にもお礼を言うべく話し掛けようとしたのだが、何やら彼女は誰かと連絡を取っているようだった。
見たところ携帯ではなく、何かの小型機械。
やはり探偵をやっているとなると、そういう物を持っているのは普通なのだろうか。
そしてふと見たところ安室もいつの間にか携帯で誰かと会話をしていた。
何はともあれ、皆に怪我がなくて何よりである。
近付いてくるパトカーのサイレンを聞きながら、安堵の息を漏らした。