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学校帰り、今日は皆でポアロでお茶をしようと園子が言い出し、偶然実家に用があったユリも途中で落ち合った。
最初は真っ直ぐ帰りたいと彼女達の誘いを断ったのだが、真純ちゃんが「安室さんに会ってみたい」と言い出し、それを聞いたユリが逆に自分も行くと言い出した始末。
蘭と園子曰く、嫉妬してるらしいが本人にその自覚はない。

甘いものに目がないユリは無表情ながらも黙々とチョコレートパフェを食べ続けていると、ふと園子がバンドをやりたいと突拍子もないことを言い出した。
何故またそんなことを……と若干呆れながら話の続きを聞くと、どうやら昨日放送していた映画に女子高生バンドが出ていたらしく、園子曰く「ヤバカワ」だったらしい。
それにすぐさま影響を受けバンドをやりたいと言い出したとのことだが、果たして言い出しっぺの園子は楽器が出来るのだろうか。
そう思ったのはコナンも同じらしく、彼が何の楽器をやるのかと質問すると、園子はドラムをやると言い出した。
その理由は昨日の映画に出ていたドラムの子が、自分そっくりで可愛かったから……というどうしようもなく単純な理由であった。
その後、蘭がキーボード、真純ちゃんがベースととんとん拍子で決まったのだが、問題はユリだった。

「じゃあユリがギターね!」
「…?」
「ちょっとアンタ話途中から聞いてないでしょ!?」

もぐもぐと口が動いている辺り、園子へのバンド話にはもう既に興味が逸れ、パフェだけに集中しているユリ。
相変わらずだなぁと蘭たちも苦笑してしまう。

「…ユリ、何かやるの?」
「あったりまえでしょ!?ここまで話聞いといて寧ろやらないとかないし!」

とは言うもののギターなんて今まで一度も触ったことがないのだ。出来る筈がない。

「ユリ……ベース弾けるよ」
「え、マジで!?」
「うむ…できちゃうのだ」

ドヤァと言わんばかりの輝かしい瞳を向けるユリ。
しかしその口元にはクリームが付いており、せっかくのキメ顔が台無しというか、でもこれがまた可愛いので突っ込む気にはなれないのであった。

「ギターいたー!!」

席を立った園子が叫びながら指を差した先にいたのは、梓さんだった。
何故そこで梓さん?と蘭が疑問にいうと、園子が映画のバンドに梓というギターの女子高生がいたからだと、どうしようもない理由を言い出した。
そんなことで白羽の矢を立てられ巻き込まれてしまった梓が気の毒で仕方がない。
ギターを触ったことがない上に女子高生ではないからと断る梓に、園子が「ちょっと練習すればすぐに弾けるようになる」と軽い口調で言うと、隣のテーブルのお客さんが「弾いてみろよ」と声を掛けてきた。
運が良いのか悪いのか、なんと隣にいた客達の手元にはギターがあった。

「そ、園子、大丈夫……?」
「だ、だいじょーぶだいじょーぶ」

そう軽口を叩く園子だが、明らかに先程までの余裕そうな態度は消えていた。
この人達も意地悪である。
結局園子はギターを弾くことが出来ず馬鹿にして笑う隣の人達のことが怖くて身を縮こまらせていると、ポンと肩を優しく叩かれた。

「あ……」

触れてきたのは安室で、彼は安心させるように微笑むと、園子の肩に掛かっているギターを持ち上げ、それを自分の肩に掛けた。
そのまま弦に指を掛け、プロ並みの腕前を披露した彼に全員開いた口が塞がらない。
前々から何でも出来る人だとは思っていたが、まさかギターまで軽々と弾けるとは思わなかった。
もしかしてこの人には弱点というものが存在しないのではないだろうか。

「凄い、かっこいい…」

ユリが僅かに頬を染めながら安室に近寄って賞賛を述べた。

「ありがとうございます。
あ、ユリさん口元にクリームが」

そう言い安室は自然な流れで、ユリの口元についていた生クリームを手でふき取った。
傍から見るとなんて仲睦まじいんだろう、と思われる光景だが、それを良しとしない少年が声を上げる。

「ユリねーちゃん、アイスとけちゃうよー」
「それはダメ…食べる」

恋より団子になりがちなユリの心を熟知しているだけあって流石のプレイだ。
それを見ていた安室も笑顔をコナンに向けるが、どう見ても目が笑っていないように見えたのは気のせいか。
しかしコナンに言われてさっさとテーブルに戻り再びパフェを食べだす彼女に、蘭たちも呆れるしかなかった。



「じゃあさ、安室さんバンドに入ってよ!」

もう軽々しくバンドをやると言わなくなるかと思いきや、あの程度のことで園子は挫けなかった。
それどころか安室を仲間に勧誘している。
それに対して彼は「目立つのはあまり…」と言って断っていたが、その代わりとして練習くらいならば見てあげられると言い出した。
そうして今から貸しスタジオで行こうと話が進んだ。
ユリは、自分も入るの?と一人首を傾げながら事の流れを傍観していると、真純が安室に鋭い眼差しを向けているのに気が付いた。

「なぁあんた、ボクとどこかで会ったことないか?」
「今日が初めてだと思いますけど?」

そんな軽いやり取りをしている二人に妙な胸騒ぎを覚え、ほんの少しだけ不安になった。



***



「えーうっそー!部屋が全部埋まってるー!?」

安室の提案でコナンたちは貸しスタジオのSOUND STUDIO HAKOBUNEに行くが、既に部屋は満員という状態だった。

「一時間程待っていただければ空きますけど…」
「どうする?」
「またにするか」
「でも折角来たのに…」
「まぁ一時間ぐらいなら待ちますか、地下に休憩所もあるようですし。
楽器を借りておけば、コードや単音で曲の雰囲気は教えられますしね」
「へぇー…あんたベースもできるんだ?」
「えぇ、キミのお兄さんのお友達より上手いかどうかは保証できかねますけどね」


地下休憩所にて。
ベースを持ち簡単に弾いてみせた世良。

「すごーい世良ちゃん!」
「いや、ただドレミを弾いただけだって…まぁ、兄貴の友人に教わったのはこれぐらいだけどね」
「ベースを教えてくれたその男の顔…覚えてますか?」
「まぁ…なんとなく…でも、どうしてわかったんだ?その友人が男だって…」

世良の問いに対して、安室は同じように「まぁ、なんとなく」と答えていた。

「あれ?そーいえばユリどこ行った?」

二人の間に微妙な空気が流れていたが、ふと園子は近くにいたはずのユリがいないことに気づく。
相変わらずのマイペースっぷりのようだ。
すると皆と少し離れたところでユリはいつの間にかベースを持ち独断で弾き始めていた。
それもあの、ぽんわりとした雰囲気からは考えられないような上手さで。

そして短いリズムを弾き終わると、

「……できちゃう子なのだ」

またも無表情ながら瞳を輝かせドヤァとベースを見せつけてきた。

「おおおお!なんか分かんないけどスゴイ!」
「そんな特技あったら教えてくれれば良かったのに!」
「こりゃあ僕より彼女の方がいいんじゃないか?」
「だめだめ、世良ちゃんも一緒にやるのよ!」
「でもさー…ユリねーちゃん、バンドより食い気みたいだよ」
「「え」」

「弾いたら…おなか、すいた」
「あそこの自販機にアイスがあるみたいですよ」
「食べる……」

空腹を感じてさっさとベースを置いたユリは安室に連れられて、アイス売り場へと向かってしまった。
それを見ていた園子たちは先ほどまでの盛り上がりとは一変。
あの子は…とガクッと肩を落とすしかなかった。


一方で百合は、園子たちの思いも知らず真剣にアイスを選んでいた。
その様子を安室はじっと見守っている。

「……バニラ」

どうやら何にするか決まったようである。
ガコンッと落ちてきたアイスを拾う彼女に安室は問いかけた。

「ユリさんはどこでベースを教わったんですか?」
「…小っちゃいころ」
「…誰に?」
「………お兄ちゃん」

べりっとアイスの紙をはがしていく彼女は小さい声でそう言う。
そしてもう何も言いたくないのか、アイスを口に運んで美味しそうに頬張った。

二人が休憩所に戻るとそこには4人組のガールズバンドが演奏の事で言い争いをしていた。
メンバーは、ギターの木船染花、ベース兼ボーカルの笛川唯子、キーボードの小暮留海、ドラムでリーダーの山路萩江。
彼女たちは一週間後にバンドのボーカルだった女性の追悼ライブを控えていたが、メンバーのほとんどが練習で気の抜けた演奏をしていた様子で、その体たらくぶりにギターの木船染花がイライラしていたのだ。
そこでリーダーの山路萩江はしばらく休憩しようと提案。
自分は仮眠をとるからとスタジオへ入っていった。




「では、演奏する曲は沖野ヨーコさんの『ダンディーライオン』だとして…誰がボーカルをやるんですか?」
「「「え」」」

バンドをやるにはボーカルが絶対不可欠だが、彼女たちはどうやらその一番大事なものを忘れていたようだ。
目を点にしてしまっている。

「そ、園子だよね?」
「あたしは二つのこと同時にできない人だから!世良ちゃん歌う?」
「僕は遠慮しとくよ」
「じゃあユリ?」
「……(フリフリ」
「そのユリくんの彼氏の新一くんはどうなんだ?
彼ならギターも弾けるんじゃないか?」
「あぁ確かに!」
「でもアイツ、バイオリンは弾けるけどギターはどうかな?それに…歌は、」
「歌は?」
「音痴」
「そんな百合ちゃんアッサリと…っ」
「…あと、」

「彼氏じゃない」

何故か安室の方を見てそう言った。
するとその途端、突如スタジオのほうから悲鳴が聞こえてくる。
コナンたちが急いでそこに駆けつけると、そこでは萩江がドラムセットに突っ付した状態で死亡していた。

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