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黒士館戦は四回以降スコアが荒れたものの、五対八で青道の勝利となったようだった。
自主練から上がった一軍の希望者に順番にマッサージを施していると、監督から全員室内練習場に集合するよう号令が出た。
マネージャーも合流し、いつも通りのポジションに並ぶ。

「今から一軍昇格選手二名を発表する」

部員たちの息を呑む音が聞こえるようだった。

「一軍昇格メンバーは、一年小湊春市、同じく一年沢村栄純。以上だ」

もともと一軍に合流していた降谷に加え、沢村、小湊弟。一年生を三人も迎え入れたこの二十名で夏を戦っていくことになる。
様々な気持ちを抱えた選手たちが沈黙する中で、明日からの練習に向けて今日はこれで解散することとの指示が下りた。

「選ばれなかった三年生だけ、ここに残れ」

動き出した部員たちに紛れて練習場を出ようと歩き出すと、「オラァ!」と倉持の声が聞こえた。

「何ボケーっと突っ立ってやがる。――行くぞ」

どうやら呆然としていた沢村を蹴っ飛ばしたようだ。

続々と解散していった部員たちの中で、主将を始めとしたスタメンの三年生が数名と、一也と倉持が留まっている。その視線は、練習場の入口で監督たちの話を聞いている沢村に注がれていた。

一軍昇格枠は二名。
かつてエースになると大きな声で宣言していた沢村だけど、その現実がどういうものかはきっとわかっていなかった。ずっと田舎の弱小野球部で仲よし子よしの野球をしていた彼には、同期や先輩を退けてまでレギュラーの座を奪い取るということの、本当の意味を知らなかったのだ。

沢村が選ばれて、クリス先輩は選ばれない。
そんな簡単なこと。

「――これからもずっと、俺の誇りであってくれ――」

監督の声と三年生の先輩のすすり泣く声が聞こえてくる。

「出て行ってどうする気だ。辞退でもするつもりか」

地面を踏みしめた沢村に結城が声をかける。

「誰が何と言おうと、お前はうちの戦力として監督に認められたんだ。そんなお前が、選ばれなかった者に何て声をかける……」

――キャプテンはよくわかっている。
選ばれない気持ちも、選ばれた気持ちも。

「俺たちにできることはただ一つ。選ばれなかったあいつらの分まで強くなることだ」

肩を震わせる沢村に、マネージャーの立場である巴はかけてあげられる言葉などない。
できるだけ気配を消したまま様子を見ていると、隣で壁に凭れていた御幸が歩き出した。

「これでもう、とことん突き進むしかなくなったな。俺も、……お前も」

多くの先輩を押しのけて正捕手の座を勝ち取ったこの人も、かつてはこの一年生と同じ気持ちを抱いたのだろうか。
この人はもうとっくに覚悟を決めている。クリス先輩の分まで、今年の夏も、秋も――来年の春、そして夏まで戦い抜く覚悟を。
その場をあとにする幼馴染の後ろについて行きながら、沢村を振り返った。


だからきみも、強くなれ。
強く。

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