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合宿五日目。
ノックをしていた前園の前に出た監督がバットを構えた瞬間、

「代われ、俺が打つ。一年小湊は外れてろ。あとの者は覚悟できてるだろうな」

選手陣の顔が強張った。
きっと何回この合宿を経験しても、この光景にだけは慣れることがないんだろうなと巴は思う。

そうやって午後四時から始まった監督ノックは日が傾いても続いている。
最初は伊佐敷を筆頭に大きな声を出してついていったが、徐々に喘鳴しか聞こえなくなってきた。ボールを落とす回数も増えてきている。まだまだ終わらない。
トンボを抱えてグラウンドの整備をしている一年生に「ナイター点けてきて」と声をかけると、目を見開いて驚かれた。

「日が沈んでも続くから」
「えっ――」
「よく見ておくといいよ。先輩たちの姿」

いつも余裕綽々の顔で試合に出て、軽々と守備をこなす先輩たちが、泥だらけになって転がる姿は本当に痛々しい。

「どうしたァ! もう声が出ないか!」

片岡監督の怒声がグラウンドに響き渡る。

伊佐敷が転ぶ、小湊兄から笑顔が消える。
増子が蹲って、倉持の足がもつれて、阪井が動きを止めて、白洲が膝をつく。
結城が、俯く。

「どうした――もう終わりか。結城」

圧倒されたようにその様を見つめていると、ふと地面を握りしめたキャプテンがよろめきながら立ち上がった。

決して饒舌な方じゃない。口を開けば少しとぼけたことばかり、天然気味なところの目立つこの人だけど、その存在だけは絶対的だった。去年の秋、世代が交代して主将の肩書を冠してからというもの不動の四番としてチームを引っ張る姿を、両目にしっかりと焼きつける。
その――ナイターに照らされてきらきら光る土埃の中、ひとり立ち上がるキャプテンの凄味たるや。

「もう一球……お願いします。監督――」

彼に続いてレギュラー陣が立ち上がる。倉持と白洲が歯を食い縛ってなんとか顔を上げると、年に一度この日だけ見られる汗だくで髪を乱した監督が、心底楽しそうに口角を釣り上げた。

「ラスト一球!最後まで集中力を切らすな!!」
「「「おおお!!」」」

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