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合宿最終日。青道・稲実・修北三チームでの総当たり戦が始まった。

第一試合、青道対稲実では、互いに主力を温存したメンバーで手の内を探りながらの試合となった。
先発は川上、キャッチャーは宮内。投手としての力は確かな一方で気の弱いところがある川上に、稲実相手に一試合投げ抜くことで自信をつけさせることを目的としたオーダーだが、八回を迎えて体力が尽きたか一挙に五失点。
結果としては四対八で敗けてしまったけれど、マウンドへ駆け寄った宮内とのやり取りを経て持ち直した川上は、九回をしっかりと無失点に凌いでくれた。

試合が終わる頃を見計らって、巴は新しいドリンクと氷の入ったクーラーボックスをベンチに運ぶ。
この後は稲実がこちらを使うことになっていた。
すると見覚えのある白頭が、うちの一年生投手に絡んでいるのを見つけた。

「昨日、大阪桐生との試合がありましてね、そこで降谷が投げたんですよ。五回を投げてなんと十一失点、十一失点ですよ!」
「うそだぁ〜。あ、じゃあさ、そっち(青道)月代巴ってマネージャーいるでしょ?そいつのことどう思う?」
「はっ!巴先輩ですか?!巴先輩は降谷とは大違いで素晴らしいマネージャーさんですよ!
仕事もできるし、おまけになんたってあの美しさですからね!まるで女神のようです!」
「でしょ?でしょ?でさ今年入った一年で、もし月代巴にちょっかいかけるやつがいたらー…」

「タイキーック!!」
「ギャアアア」

強烈なタイキックが沢村に叩き込まれる。その後ろには御幸もやってきていた。

「べらべらこっちの事情喋ってんじゃねーぞ!このバカが!」

倉持の怒声を聞いた鳴、そして稲実正捕手の原田がぎょっとした顔になる。

「ええっ、じゃあ今のってホントの話?ライバルチームにホントの情報喋っちゃったよ!」
「バカかこいつ」

沢村はすごく素直ないい子だが、ちょっと思考回路が単純なのだ。そこが可愛いから御幸も倉持もついついからかいたくなるんだろうけど、データが大きくものを言う日本の野球界では気をつけなければならない。

「まぁ、ほんとのことだ。降谷の調子は決してよくねーよ」
「一也……お前に言われると一気に嘘くさく聞こえるんだけど?」

すると突然、成宮が離れたところにいた巴を目にいれと思えば、彼のつり目がキラキラと嬉しそうに輝いて大きく見開かれた。

「巴っ…巴ー!」

ブンブンと大きく腕を振りながら彼女の名前を叫ぶ。
そんなに叫ばなくても本人には十分声は届いているようで、巴は成宮の方を一瞥しただけで何も言わずに背を向けてグラウンドから出て行った。
彼女は(アプローチをしてくる)男子には塩対応だが、それは青道だけでなく他校であっても変わらない。

「ぷぷぷ、巴ったら照れちゃってー可愛いなー」

しかし、そんなものは成宮にとっては全く別の意味に変換されるようで。
彼女の塩対応に慣れている様子の成宮に、事情を知らない沢村だけは、自分のとこの女神を唆そうとする敵にしか見えなくなっていた。

「おおおおお前!さっきから聞いていれば、我ら青道の女神、巴先輩に近づこうとは、、100年早いわぁ!!」
「は?何言ってんの?巴は俺の幼馴染なんだけど」
「へ?…オサナナジミ?」
「そ!んでもって、俺の未来のお嫁さんってわけ!だからさー、キミたち一年は知らなくて当然だったと思うけど、巴にちょっかいかけようとしても無駄だから、そこんとこヨロシク〜」

そこまで聞いて、沢村は珍しく自身の脳内記憶を巡った。
以前、小湊弟の春市から聞いた話では、確か彼女の幼馴染は御幸だったと記憶しているが。

「幼馴染って、それこっちの御幸一也の話じゃなかったのか?!」
「あぁ、まぁ確かに…俺と月代は小・中と同じ学校で、家も近所だったけど、」
「その一也より俺のが先に巴と会ってたし、家も隣同士だったわけ!付き合いの長さはオイラの方が断然だね!」

ヘヘンと鼻高々に鼓舞する成宮に、御幸や倉持は苦笑いだ。沢村だけはぐぬぬぬと悔しがっていたが。
それまで黙って話を聞いていた原田が舌打ちをした。

「もう行くぞ鳴、俺こいつ嫌いなんだ」
「あーそっか!去年の夏、一也のリードに完全に抑えられて――」
「うるせぇ」

多分、同じ捕手同士相性が悪いのだろう。自由奔放成宮を上手く飼いならしている原田だが、それをさらにひねくれさせたような御幸のことは苦手としているようだった。

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