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青道対修北戦。
前の試合での成宮の挑発をしっかりと受け取った青道の選手たちが気合いの入ったバッティングを見せて、六回時点で十二対〇。稲実と青道のベストメンバーを連続で相手にしなければならない修北のがむしろ不憫になってくる。
ただし登板している丹波の課題は後半戦。体力の十分ある前半は好投を見せることも多いのだが、一度捉まると途端に調子を崩し、後半自滅してしまう。これがあるからあの人は絶対的エースとは呼んでもらえないのだ。
六回裏、修北の攻撃。
カーブかストレートを投げる丹波に対して、そろそろ狙い球を絞ってバットを振ってくる頃だ。そして普段この投手が打ち込まれ始めるタイミングでもある。
――が、一球目、丹波が投げたのはカーブでもストレートでもなく、打者の手元でシンカー気味にすとんと沈むフォークだった。
球種が増えればもちろん御幸もリードのし甲斐が出てくる。だけどフォークは肘に負担がかかるから、後半戦で体力の削られている丹波にはあまり投げさせたくないだろうな。
しっかり〇点に抑えて守備陣が戻ってきたベンチがにわかに騒がしくなった。
「一点取られたらスキンヘッド、二点取られたら眉毛全剃り」とかいう恐ろしい発言が聞こえてきたので、マネージャーみんなで顔を見合わせてしまう。
「す、すきんへっど……?」
「ベンチで何が起きてるんでしょう」
「楽しそうね」
白洲がヒットで出塁するも坂井が三振。笑い声の溢れるベンチから丹波が出てきて打席に立った。
ベンチで何があったのか、丹波はやたらと気合いの入った表情でバットを握っている。
「なんだか丹波くん、嬉しそう」
「一点取られたらスキンヘッドなのに……」
しかし、悲劇は突然彼らの前にあらわれる。
修北の投手の放ったボールが丹波先輩の顔面を強襲したのだ。
「――!」
貴子先輩の声にならない悲鳴。片岡監督が真っ先にベンチを飛び出す。
「唯ちゃん、幸子ちゃん、担架持ってきて…っ!」
巴が半ば叫ぶように指示を出すと、あまりの衝撃に固まっていた二人は弾かれたように走り出した。グラウンドの中に入ってベンチに置いてあるクーラーボックスを抱えると、「どいて」と沢村たちを押しのけて駆けつける。
「丹波、動くなじっとしてろ!」
「担架すぐ来ますから起こさないでください、っ丹波先輩、当たったのは顎ですね、冷やします」
こうやって怪我をした時、多くの人は混乱する頭で心配をかけまいと平気に振る舞おうとしてしまう。
丹波も案の定起き上がろうとして監督に止められていたので、押さえつけながら応急処置に移った。
ボールが当たったのは顔面。だが倒れ方がまずい。頭を打っていたらと考えると動かさない方がいいはずだった。
「御幸、唯ちゃんたちが担架取りに行ったから手伝ってあげて、倉持も、早く…!」
「っ――わかった」
強打を受けた顎を押さえている丹波の手をゆっくりと引き剥がし、腰に差してあったタオルで保冷剤を包んで患部に当てる。震える丹波の手を握りしめたまま顔を上げると、人混みの向こうに御幸が見えた。
「担架通るからそこ道空けてっ、誰か丹波先輩の鞄と靴を持ってきてください、保険証がいります。唯ちゃんたちはスパイク脱がして」
「俺が行ってくる。財布に入れていたはずだ」
「担架に乗せるぞ、手を貸してくれ――」
「頭を揺らさないように――」
「――――」