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西東京大会二回戦、青道高校 対 米門西高校。
強豪校である青道野球部の夏の大会は、初戦からチアリーディング部と吹奏楽部が応援団として加わってくれる。応援にはベンチ入りできなかった部員だけでなく、部員の家族、そしてOBさんなどかなりの人数が来てくれるのでスタンドは賑やかだ。

一回表、青道の攻撃から試合開始。

マウンドに出てきた先発投手の背番号を見て、巴は目を細めた。
背番号10。一年生の頃は投手として試合に出ていたが、それ以降投手としての公式戦出場記録がなかったためノーマークだった。

一番打者の倉持がバッターボックスに入ってじっと投手を見つめる。
サウスポーのエースを想定していた選手たちにとっては、予期しない相手だ。
右のアンダースロー。サイドスローである川上のフォームよりもっと下、一度浮き上がって沈む軌道を描く、スピードのない厄介な球だ。

恐らくは後続の打者に一球でも多く見せてやらねばと考えているのだろう、倉持は二球見送って2ストライクに追い込まれた。
三球目はワンバンのボール球。後逸したのを見て倉持が走り出すが、捕手は落ち着いて球を処理している。

それから小湊兄がサードライナー、伊佐敷がライトフライを打ち上げ攻守交代となった。三者凡退だ。
想定しなかった投手が出てきて動きが固くなるのは仕方がない。むしろ三人とも自分の仕事をしっかりとこなしてくれた結果だが、夏本選、初先発の降谷のためにも先制点はほしかったところだ。

一回裏、マウンドに立った降谷が振りかぶる。
その剛速球にスタンドが湧き立ち、相手チームが呆気に取られた。

米門西の打者は降谷の高めのボール球に悉く手を出して空振り三振しまくった。初回から全力投球、三者三振と上々の立ち上がりに、隣で応援しているマネージャー四人が「やったぁ!」と飛び上がる。
だけど、あのボール球が通用するのは精々今のうちだけだ。
夏合宿の大阪桐生がそうだったように、市大三や稲実のような強豪校には早々に攻略されてしまう。場合によってはもっと早く通用しなくなる日がくるかもしれない。

二回表、青道の攻撃。
吹奏楽部に曲目の指示が出た。哲さんのヒッティングマーチが流れ出すと、部員の応援も熱を帯びる。
四番バッターでキャプテン、みんなに心底信頼される主将の結城だ。

そこからの攻撃はすごかった。
相手守備の極端な右シフト、アウトコース勝負に対して、結城が鋭い打球で守備の壁を抉じ開ける。増子のコンパクトなスイングでランナー一・三塁。続く一也の打席では、倉持が初回に空振りした低めの変化球を狙い打ち、見事に結城をホームに帰した。

「やったぁ、一点ですよ、巴先輩!」
「ランナーがいたからね。これで打てなかったらただの眼鏡」
「巴それ御幸くん泣くよ?」
「巴先輩って、たまに御幸先輩に厳しくないですか……?」

怒涛の三連続ヒットで相手バッテリーが強打を警戒したところで、続く白洲が初球スクイズ。増子がホームに帰って二点目。
坂井のレフトフライで一也のタッチアップ、あっという間に三点目を追加して攻守交代となった。

固さの取れた青道打線が爆発し、四回時点で十五点の差がついた。降谷のピッチングも絶好調で、相手に点を許していない。
五回コールドも見えてきた四回裏に投手が交代し、ここでなんと、沢村が登板した。

「ガンガン打たしてくんで、よろしくお願いします!!」

野球の知識もフィールディングも、コントロールも未熟な沢村の登板。十五点差がついているからこその選出だろうけれど、監督は本気で戦いながら投手陣を育てていくつもりらしい。

初球デッドボールで自らピンチは招いたものの、二人目の打者のバントを拾って倉持へ送球、そのまま一塁もアウトに取り併殺打。
最初は本当に野球ど素人だったのに、フィールディングがすっかり上手になっていた。
初めての公式試合登板、落ち着いたいい形でスタートを切れたみたいだ。

その後五回表、当初こちらが予想していたエースが登板したものの、五回裏に川上が三人できっちり締めて五回コールド勝ちを収めた。

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