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その後打者が一巡した降谷から沢村、ホームランを打たれて崩れ落ちた沢村から川上、悪い空気をそのまま引き継いでしまった川上から丹波へ、投手陣のリレーが繋がれた。
夏合宿最終日、修北戦でデッドボールを受けて以降、一か月以上ぶりにエースがマウンドに戻ってきたのだ。
八回表。ツーアウト一・三塁。点差は僅かに一点青道のリード。
迎える打者は薬師高校の発奮剤でもある、エースの真田。
初球、アウトコースのストレートが逆球に外れるもファール。
二球目もストレート。これも真田くんが打ち上げてファール。
十分に真っ直ぐの軌道を見せつけたところで三球目、大きく縦に割れる丹波の代名詞のカーブは、キャッチャーミットの手前で地面に叩きつけられた。
後ろに、逸らした。
誰かが悲鳴にも似た声を上げた瞬間、咄嗟に右手でボールを弾いた御幸がそれをしっかりと地面に抑え込み、スタートを切ろうとした三塁のランナーを睨みつける。
危うく同点のところを凌いだ捕手のファインプレーに薬師ベンチが愕然とした。「マジかあの人……」とざわついている。
「……あの、バカ」
「巴?」
四球目。後ろに逸らしかけたカーブをもう一度投げることはないだろうという打者の推測の裏をかく、強気も強気のリードが光る。再び放たれた丹波のカーブが決まり、青道のエースがピンチをしっかりと堪えて攻守交代となった。
立ち上がってベンチへ下がっていく御幸が小さくガッツポーズしている。
珍しい。それくらい嬉しいんだ、彼も。
「高嶋先生、すみませんが少しベンチに行ってきます」
「え、ええ。どうかした?」
「丹波先輩のカーブを素手で受け止めた捕手を診てきます」
ベンチ裏から小湊弟に声をかけて、レガースやマスクを外した御幸を呼んでもらう。
突然やってきた巴に不思議そうな顔をするメンバーの中、きゅっと眉を寄せて右手を差し出すと、御幸は「たはー」と笑いながら握りしめてきた。
握力を確認して、溜め息をつきながら放す。
「問題ない?」
「さすがに瞬間は痛かったけどな」
「ならいいけど。ちゃんと冷やしてね」
最終回、レフトへ降谷に代わって将を置き、守備面への不安を減らしたところで丹波が続投した。
薬師も意地を見せ打順を轟まで回したものの、まだ一年生の彼にはチームの期待が重圧になっていたらしい。
いつも笑いながら「スゲェ」とバットを振っていた彼から笑顔が消えた一方、チームの期待を力に代える、その覚悟のある丹波が三年生としての貫録を見せる。
最終スコアは五対八。
四回裏で引きずり出した薬師高校のエース真田も最後まで力投したが、四人の投手リレーをつないだ青道が、薬師の勢いを跳ね退ける結果となった。
その日、西東京大会の四強が出揃った。
青道、仙泉、稲実、桜沢。
薬師との試合を終えて帰寮し、巴たちは洗濯や洗い物をしてから解散となった。今日の試合の様子を野球部日誌に記入した頃には夕方になっていて、食堂のテレビからはニュースが流れている。
準決勝の相手である仙泉高校は、西東京三強に並ぶ学校ではないものの、毎年ベスト8常連の強豪校だ。
青道はこれまで全試合で先発してきている降谷を休ませるため、復帰したばかりの丹波を先発に、本日課題の残るピッチングをした沢村と川上を抑えで起用することになった。