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翌日と翌々日。
青道野球部には二日間のオフが与えられた。
習慣で五時半に起きてしまった巴は、起きてから思考が追いつかなかったのだろうか。

いつの間にか青心寮の前に辿りついていた。
寮の中は静かだった。

昨日干して帰った洗濯物を取り込む。
一枚ずつ下ろして、きれいに畳んで、カゴの中に積み重ねていく。
十五枚を数えたところで、物音を聞きつけたのか前園が顔を出した。

「……うおっ、高峰!?なんや来とったんかい」
「前園。……うん、まあ、洗濯物干しっぱなしだったし」
「そんなん放っとけば俺らやるで?オフやろお前も」

呆れたような表情の前園だったが、そういう彼だって手にはバットがある。

「……落ち着かなくて」
「まあ、……気持ちはわかるけどな。あんま無理せんとけよ」

そのまま室内練習場へ向かっていった前園の後ろ姿を見送って、作業を再開した。
大量のタオルが終わったら、次はユニフォームだ。昨日貴子先輩が涙をこらえながら手洗いをして、洗濯機に回して、丁寧に干したユニフォーム。
背番号順に並んだ、白の――

―――けれど大会が終わったから。
背番号は白紙に戻る。

そう考えたら自分でも驚くほどあっさりと涙が零れた。

昨日、試合が決まったあの瞬間も、鳴に「頑張って」と言えた瞬間も、寮に帰ってからも、帰宅してからも泣かなかったから、そんなにショックじゃなかったのかもしれないと思っていた。
だけど。

ユニフォームを眺めながらしばらく泣いた。
三年生の先輩たちが荷物をまとめて実家に帰っていく音が聞こえる。二日間をゆっくりとおうちで過ごしたその後は、部屋を引っ越して、みんな受験に専念していくんだろう。
二日後には、あの人たちのいない部活が始まる。

***

食堂で御幸が昨日のビデオを見ている。
どうしてもユニフォームに手をつけることができなくて、タオルを仕舞ってからはそちらに向かう。
入口からひっそりと、その背中を眺めた。

『九回裏、劇的な幕切れ――』

画面の中では稲実の選手たちが涙交じりに抱き合っていた。
その光景を睨みつける御幸が爪を噛む。子どもの頃に何度か見た癖だった。何年も前に、やめたと思っていた。

巴は隣に行こうか少し悩んだけれど、きっと一人で考えたいこともあるだろう。
彼は青道の正捕手。青道の敗けは、御幸のリードの敗けだ。
他の誰が否と唱えても、敗因はそれだけでないとわかっていても、それだけの重圧はあったはず。

「……入らないのかよ」

小声で囁いてきたのは倉持だった。
巴の目元を見て物言いたげな表情になったが、口を噤んで視線を御幸の後ろ姿へと移す。

「隣にいてやらねぇのか」

その問いに答えないでいると、倉持は小さく溜め息をついて食堂へと足を踏み入れた。
御幸が振り返る前に巴は踵を返して遠ざかる。

―――あの人はもう前を見ている。誰よりも早く。

二日後には、あの人たちのいない部活が始まる。
新しい青道野球部の、長く厳しい、残暑が始まる。

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