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《明日から甲子園!!!!》

巴がもう一人の幼馴染からそんなメールが来ていたことに気付いたのは、お風呂から上がってしばらくしてからだった。
すでに球場近辺の宿泊施設に入っているはずの成宮からのメールになんて返信しようか迷っていたら、当の彼から電話がかかってきた。

「…はい」
『あっ、巴!なんで返事しないのさ!』
「今なんて送ろうか考えていたところ。……早く寝た方がいいよ」
『寝る寝る、超寝る!』

後ろの方から『鳴うるせぇ』『坊やだからな』と二年生たちの声が聞こえてくる。
明日から甲子園だというのに緊張しているように思えないのは、彼らにとってあの舞台が二度目だからだろうか。
それでも巴は成宮の声に若干の違和感を抱いて、タオルで髪を拭きながら首を傾げてしまった。

「鳴、大丈夫?」
『…………なにがだよ。全ッ然大丈夫だし!』
「全然大丈夫じゃなさそう。緊張?初日から試合だものね」
『……エスパーかよ、お前』

部屋を出たらしい。ぱたんとドアを閉じる音が聞こえると、さっきまで後ろで騒いでいた声がなくなった。

「鳴」
『……なに』

わざわざ、甲子園前日に、決勝戦で下した相手校のマネージャーにメールして。電話なんてして。
こっちの複雑な気持ちなんて少しも考えていないのか、彼のそういうところは昔からあまり変わらない。
でも巴にとっても、成宮にとってもこういったことは当たり前のようなもの。

「大丈夫。怖くないよ」
『…………』
「あなたの目の前には原田さんがいるでしょ。後ろには白河くんや神谷くんたち、あなたが実力を信じて引き抜いた頼れる同級生。あなたのわがままっぷりに目を瞑って今まで助けてきてくれた部員。ベンチにも、スタンドにも、あなたの味方がたくさんいる。勿論、東京の片隅に甲子園で戦うあなたを応援している一介のマネもいる」
『…ったりまえじゃん』

「あなたは凄い投手」
『知ってる』
「稲実は強いチームだよ」
『知ってるよ』
「何も不安に思うことないんじゃないかな?私の自慢の幼馴染は常に上を目指して戦う、立派な人だから」

しばらく、成宮は何も言わなかった。
何かを噛みしめるように深い呼吸を何度か繰り返したのち、『うん』と小さくうなずく。

『電話してよかった。気合い入った』
「うち(青道)の分まで頑張って、どうせなら全国制覇してね、応援してる』
『うん、……って、え!?約束覚えてたの?!』
「え?」
『っっ、オイラ頑張るよ!巴、待っててね!!』
「鳴、何が…」
『よっしゃ!俄然やる気でた!あんがとね!おやすみ!あ、雅さーん!ねぇ聞いてよあのさ――『いいから寝ろ!!』

ブツッーー通話が切れた。

「……なんだったの」

最後の方には原田の怒声まで聞こえた。
成宮がとんとん拍子に話を進めて勝手に終わった通話に、巴は首を傾げるしかなかった。


翌日迎えた甲子園初戦。
先発した成宮とリリーフの三年生投手が完封リレーをつなぎ、稲城実業高校は危なげなく相手を下して二回戦進出を決めた。
同時刻行われた青道対埼玉堺の練習試合では、第一試合、一年生投手二人で試合を作り白星スタート。
そしてダブルヘッダー第二試合。

四死球7被安打5
先発川上――五回持たず

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