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薬師との試合に完敗し、沢村のイップスが判明し、自分たちの実力不足をこれでもかというほど突きつけられて、チームの危機を感じた結果となった。
課題が多く見えてきた選手たちだったが、夏休み最後の日。夕飯が終わってから食堂で課題を広げ始めた二年を見て、巴は呆れて声も出なかった。一応、課題のことは時折気にかけて声をかけていたというのに、高校球児にはもっと強く言うべきだったかもしれない。
二年の姿を見て一年も一部ざわざわし始めた。どうやら彼らも課題の存在を思い出したようだ。
そんななか意外にもこの中に紛れていそうな人物が見当たらない。彼は課題は終わっているのだろうか。
もしかしたらという考えから巴はグラウンドへと向かった。
「沢村くん」
Bグラウンドを走っていた彼が近くまで来たところで、腕を掴んで止めた。
「……巴先輩……」
「一旦休憩。これ、飲んで」
沢村のイップスが発覚した先日の薬師戦以降、彼は練習中ずっとグラウンドを走っている。
まるで春、監督と一悶着起こした時のように。
放っておくと練習が終わっても夕飯を食べても走り続けるので、ある程度のところで無理やり止めないといけない。
「沢村は夏休みの課題、終わってる?」
「……ハイ」
「そう、意外」
「はるっちと一緒に……」
「あぁ、なるほどね……」
忘れたくても忘れえない――夏の敗戦。
白河くんのメットに当たって硬い音を立てた白球、それを放った沢村の表情。焦ったように彼に駆け寄った御幸、そこから全てが傾いたあの決勝戦。
スタンドから見ているしかなかったあの夏の暑さを思い出しながら、大人しく水分をとる沢村の隣に佇む。
無言でドリンクを傾ける彼が、今なにを考えているのかはわからない。
「……ありがとうございました」
「程々にね。体を壊したらイップス克服も何もないんだから」
沢村は何か言いたげな表情になって、結局口を閉ざし、ぺこりと一礼をして走り出した。
でも彼は、
きっとこんなところで立ち止まるような人ではないと――そんな、他人事の視点で事態を見てしまう自分に吐き気がした。
でも信じることしかできない。
いくら識っていたって、無力なものは無力だ。
グラウンドを出て食堂まで戻ると、何故かしょんぼりした御幸が倉持と向かい合って座っている。
他のみんなは大体終わったみたいで、苦笑いの小野が二人を見守っていた。
「……何してるの、御幸」
「古典のプリント丸々存在忘れてた……」
「……御幸って要領いいのに肝心なところで本当……アレよね」
「アレとは何だ、アレとは」