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九月二十七日、本大会抽選日。
持ち帰ったトーナメント表を覗き込んだみんなの顔に冷や汗が浮かぶ。

「……初戦が帝東……その次勝っても稲実かよ……」

「はは」と誰かの乾いた笑い声が空しく響いた瞬間、倉持がカッと目を見開いて御幸に怒鳴りつけた。

「死のブロックじゃねぇか!!」
「てめぇクジ運にもムラがあんのかよ!!」
「月代が一緒に行ってもこの体たらくか!!」

「はっはっは。燃えんだろ?」

***

帝東戦前日、十月一日。
秋雨の降りそぼる中、練習は早めに切り上げられ、青心寮はどこか緊張した空気に包まれている。明日から始まる青道の秋大本選、その意味をそれぞれ重く受け止めているからかもしれなかった。

「最後に一つだけいいか」
「敵は己の中にあり」
「どんな状況でも最後まで諦めるな。自分たちが流してきた汗に誇りを持て」

ミーティングで監督が部員みんなに投げかけたその言葉を反芻しながら作業していると、帰り支度を整えたマネージャー三人が食堂に顔を覗かせた。
そして巴の手元をみて、春乃が「わあっ」と歓声を上げた。

「てるてる坊主ですね!」
「うん。雨天順延ならまだしも、雨の中試合決行して雨天コールドとかなっちゃったら嫌だからね」

すると梅本が一番に隣に座り、ティッシュを抜いてくるくる丸め始める。
「あ、私もやる」「私も作ります」と、唯も春乃もやる気満々だ。

「まああんまり気合い入れて作って結局雨が降っても悲しいから、一人一つくらいにしておこう」
「そうだね」

丸めたティッシュに一枚被せて、首の辺りを糸で括る。
思い思いに顔を書いて完成だ。すると何かを思いついたのか梅本がサングラスとヒゲを書きこんだ。

「監督だ」
「怒られるかな」
「見つからなきゃいいんじゃない……てか、なんかじわじわくる」

四人の笑い声を聞きつけたのか、いつの間にやら部員が何人か食堂を覗き込んでいた。
御幸や倉持を筆頭に、レギュラー陣が照れくさそうな笑みを交わしながらこちらを見ている。

「あ、見つかった」
「見つかった、じゃねーよ! 早く帰れよな、ったく……」

どやどやと上がり込んできた男子連中が、マネージャーたちの作ったてるてる坊主を見ては「形が悪い」「こんなんで晴れるか」と文句を言ったり、「可愛いね」「ありがとう」と素直にお礼を伝えたり。
まあ大半は照れ隠しだといい加減わかっているので、二年マネ三人組は「やかましい」と流すに留めた。

「明日、アンダー多めに持って行ってね。雨天決行の可能性が高いから」
「雨降ってても試合やるんですか!?」

梅本のてるてる坊主を掲げて「ボス!!」と崇めていた沢村くんがこちらを向く。

「余程ひどかったら順延になるけど、主催側も球場側もできるだけ日程変更は避けたいだろうからね。ひどくない限りやると思うよ」
「そのためのてるてる坊主だろ?」
「ここまできたら他力本願だけど、あまり期待はしないでね」

てるてる坊主を四つ集めて御幸に渡し、「そのへん吊るしといて」とお願いすると、梅本作の監督を見て、お腹を抱えて笑っていた。
その後、てるてる坊主は食堂の入口に四つ並べられ、通りがかる監督や落合コーチはびっくりしていたらしい。

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