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秋大本選一回戦、しかも雨天にも関わらずスタンドは人でいっぱいだった。
この試合に対する注目度が比例しているようである。
そしてそれぞれのチームがベンチに入り、試合開始が刻々と迫るなかこちらは帝東ベンチの様子。

「おい、見たか?青道の方!」
「見た見た!噂通りすっげー美女だったな!」
「あんな子がマネージャーとかいいよな〜」

巴の存在に気付いた一部の部員たちが盛り上がっていた。
だが、エースの向井は冷めた様子で見ている。

「あぁーやだやだ、敵チームのマネに対してあんな注目するなんて」
「やけに冷めた言い方だな」
「別に興味ないんで。まぁ確かにいい女だと思いますけど、そもそも年上ってタイプじゃないですし。攻略めんどくさいし…」
「攻略?」
「こっちの話ですよ。乾さんはどうなんスか?」
「俺は抽選会場で見たからな。まぁ、やはりオーラはあったぞ。そして目が合ったとき、俺は雷が落ちる衝撃を受けた…!」
「ホント雷良く落ちますね!乾さんとこ!…だから今日こんな天気じゃないんですか?やめて下さいよ、試合中に雷落とすのは」
「何を言う。俺は実際に雷なんて落とせない」
「いや、知ってます…てか乾さんに普通にツッこまれるとは思わなかった」


初戦から東西の強豪の潰し合い、夏の予選では見られない希少な試合だ。試合前ノックをする選手たちを眺めながら空を仰ぐ。
雨はしばらく止みそうにない。
こうなることも見越してタオルは多めに持ってきたけれど、難しい試合になりそうだ。

そぼ降る雨の中、試合序盤は投手戦となった。
慣れない雨天の試合に臨む先発の降谷を普段以上に強気のリードで引っ張る御幸と、警戒していた通り低めの変化球冴え渡る向井・乾のバッテリー。同じ投手と捕手でも色々なバランスがあるなと感心しながら試合を見守る。
こちらも思いきって低めを捨てて狙い球を絞ってはいるものの、なかなか甘い球もなく、結局は難しいところを打たされているような状況だった。

しかし雨が激しくなったため試合は一旦中断ののち、小雨になった隙に試合が再開された。
再開は五回裏から。その回の打席で少し様子がおかしかった降谷は、六回表の守備でさらに崩れた。
先頭打者にフォアボール、四番乾くんのヒットでノーアウト二・三塁。前進守備で迎え撃った五番に先制タイムリーを打たれた。
ブロ予選最終戦を思い出すような乱調。
麻生の好返球で二点目は防いだものの、長い均衡が破られた。

ワンナウト二塁の状況で暴投にも近いボールが先行する。ベンチから見ても、御幸が打つ手に困っているのがわかった。
投手のあの不調に加えて、捕手まで戸惑っているのでは――どうしようもない。

呼ばれたのは沢村だった。勿論、活路を見出したアウトコースにもまだ不安はあるし、インコースに投げることなく帝東打線を抑えるのは至難の業だ。けれど多分、やれることが少ない分、どちらも悩まなくて済む。
打者二人に対しアウトコース中心の配球。悪い流れを食い止める完璧なリリーフだった。

沢村は帽子を脱いで深呼吸している。ボールペンを置いて耳を塞いだ瞬間、彼が大きく口を開いた。

「うお――しおしおし!!」
「るせえ!ベンチで大声出すな!」
「さーせん!!」

沢村がマウンドに上がっただけで不思議と活気づくベンチを見回す。先制されたといってもまだ六回、焦りもそこまでなさそうだ。

その後の回も沢村は安定感あるピッチングで零点に切り抜ける。
八回裏、ツーアウトの状況から東条のヒットで出塁し、満塁にて前園が打席に立つ。
今日一本もヒットのない彼の打席には緊張感もあったものの、見極め、ファールで粘った六球目、インコースの球を上手く捌いてレフトライン際へフェア。

三点の追加をもらって最終回に川上が登板し一点返されたものの、最後は一点差に逃げ切った。

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