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一方、あれから1人食堂に残っていた御幸。
そのまま席に座ってひどく思い悩んでいた。
渡辺の気持ちを簡単に判断したこと、前園の主張、小野が言ったみんなが抱えている不安と迷い、そして何より巴のこと。
考えごとをしていたせいか、御幸は自分の目の前に誰かが座ったような気がして、ふと顔をあげるとそこには幼馴染がこちらをまっすぐ見つめていた。
「――……巴」
御幸が無意識に名前をよぶ。
そうして彼女が座ってからしばらく沈黙があったが、巴の方からゆっくりと口を開いた。
「…さっきは、叩いてごめん」
申し訳ない表情を浮かべながら先ほどの謝罪をする巴。
「気にすんなよ、俺が悪かったから…」
やさしい口調で答える御幸だが、顔つきはどことなく暗い表情だった。
「月代、お前の言う通り俺にはやっぱりキャプテンは向かねぇよ。
…さっきゾノに言われた、俺の考えは認められないって。それに俺はみんなの気持ちをちゃんと分かってなかった…いや分かろうとしてなかったのかもな。だからナベたちの気持ちもしっかり理解できなかったんだよ」
巴は渡辺たちの気持ちを代弁しようかと思ったが、自分が言って良いのか考えてしまい言葉が詰まった。
そのときずっと手にしていた渡辺から預かったノートを巴は机に出した。
「これ、渡辺くんから」
「これは…」
「鵜久森の打者の違いをまとめたノートだって」
「そうか…ここまでナベは…」
ノートの中身を見つめながら御幸は先ほどの倉持の言葉を思い出す。
「馬鹿だよな、俺は。こんなに一生懸命やってくれるやつが簡単に辞めるだなんて意志持ってるわけねぇのに、もう少しナベの話を聞いてやるべきだった…」
「…渡辺もわかってると思う」
「何がだよ?」
「御幸がチームのことを真剣に考えているから、そういった言い方をしたってこと」
「…でも俺はあいつのことを」
「もし渡辺が御幸に言われたことを気にしていたら、今日こんなに一生懸命偵察やってきてくれなかったと思う。
これは渡辺なりに、皆と一緒に戦おうとした証にみえる」
「あぁ、アイツの気持ちがわかった気がする。でもナベだけじゃなくて俺はちゃんとみんなの気持ちを理解する必要があるよな」
「1人1人の気持ちを理解するのってそう簡単にはできない。だけど、ここにいる皆が同じ1つの同じ目標を持っている。
それがあるから例えバラバラになってもきっと大丈夫」
「そうだな…今は明日の試合勝つことを考えねぇとな」
「…きっと前園たちも同じことを思ってる」
巴はそう言いながら御幸に微笑む。
「…サンキュ、月代。つーかダセェよな、俺。
こんなことばっかで情けねぇよ。なかなか上手くいかねぇ」
苦笑いをしながら話す御幸。
「今更かっこつける必要ないと思う」
「え、」
「幼馴染の情けない部分なんて、いっぱい知ってるから」
「ええええええ」
初めの雰囲気とは一変して朗らかな様子の2人。
そのまま渡辺のノートを使って鵜久森の対策を考え始めた。