59

「足関節側副靭帯1度損傷。1〜2週間の安静が必要だそうだ」

次の王谷戦を前に、降谷の怪我が発覚した。気づいたのは工藤だった。
準決勝に間に合うかどうかだけれど――足首は油断すると癖になることもある。
一番近くで見ていながら気付かなかったことに御幸が頭を抱えていた。

監督からこの後の練習の指示が出て、みんなが立ち上がる。

「ナベ。今日の王谷のデータ取りも完璧だな、やっぱお前に頼んでよかった」

御幸は今まで自分からチームメイトに声を掛けに行くことが少なかった人なので、きっとそれなりに無理をしているのだろう。彼は彼なりにキャプテンらしく在ろうとしているのか。そんな御幸の姿に渡辺が微笑んだ。

「ありがと。少しでもチームの役に立てたならよかったよ……」

どうやら少しずつ、彼らも前向きになりつつあるようだった。
彼らの様子を見送っていた巴はそのまま一足先に食堂を出た工藤を呼び止めた。

「月代?」
「降谷のこと、気付いてくれてありがとう」
「いや、これぐらいお安い御用さ」
「しっかり監視してあげてほしい。駄目って言っても無理すると思うから」
「あ……そうだな、確かに」
「足の痛みがひくまでテーピングは教えないで。痛くなくなったからって練習に参加しようとしたら絶対に止めて。
足首は油断すると癖になりやすい。絶対に再発は避けたいから」
「わかった! 任せろ」

どんと胸元を叩いて請け負ってくれた二人に「お願いね」と手を合わせた。
練習へ向かうみんなの背中を見送ってから、再び食堂に顔を出すと、前園がテーブルに突っ伏してうんうん唸っていた。

「前園、最後残るなら戸締りしてきてね」
「……月代〜〜〜。俺は……俺はアホや……」

どうやら前園も前園なりにようやく自分の副キャプテンとしての立場を思い出したようだ。

「最初から全部完璧にできる人なんていない。
アホならアホなりにやっていくしかないでしょう」
「……せやな……」

どこかピリピリしていた空気が緩和しつつある。
こうやって衝突しながら大きくなっていくもの。

そうやって少しずつ、チームになっていく。

ALICE+