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「だから言うてるやろ!2年生だけでミーティングするんや!」

十月十三日。グラウンドに向かう途中、前園が御幸に対して意見を主張していた。

「普段言えないことレギュラー陣に向けて言うてもらうんや!本音をさらけ出してな」
「面と向かって悪口言われんのかよ」
「悪口やない本音や!」

前園はレギュラー陣に向けてみんなが思ってることを本音をさらして言うことを意見とする。
それをチームの決起に繋げようとする前園の考えであった。
そして自分の御幸を責めてばかりのことを謝罪し、今後は自分も一緒に考えていくと力を込めて言う。
少し離れたところでその様子を渡辺とともに見ている巴。工藤と東尾も一緒だ。
しかし、特に何も心配は必要なかった。

「嫌々データ取らされてるワケじゃないし、部を辞めるつもりもないから」

彼ら3人の目はもう迷いはなさそうだった。
どれだけ長くいてもあと1年もないんだ。誰一人欠けて欲しくない。

***

王谷戦は沢村のフルイニング完投勝利。
早速試したチェンジアップがベースのずいぶん手前で叩きつけられるとか、王谷の頭脳プレイに翻弄されてフォースボークをとられるとか、相手の若林投手が一也の打席で突然フォームチェンジするとか、目を剥く展開はいくつかあったものの最終的には危なげなく勝ち越した。
渡辺が分析中に気付いた王谷の守備の特徴を利用した攻撃で逆転。今までのわだかまりが解消された反動かチームの状態はすこぶるよく、小湊にホームランが出たり、沢村のチェンジアップが後半バシバシ決まったり、二遊間が見事なグラブトスを決めたり、ベンチもスタンドも常に明るい声で満ちていた。

沢村だけでなく、チーム全体が試合ごとにどんどん強くなっていく。

甲子園まで、あと二つ。


試合が終わって片付けを終えると、次の仙泉高校と入れ違いにベンチを出る。
大きな荷物を先にバスに載せ、第二試合が始まるまでの間、試合を観にきてくれていた三年生の先輩たちのところでお喋りをしていた。クリス先輩は御幸に呼ばれたらしい。沢村が嬉しそうに「師匠!」と駆け寄る一方で、御幸は結城に挨拶しに行っていた。

そんななか降谷だけが輪から外れた場所で少しだけ目を瞠っていた。
巴はそれに気づき、珍しい表情をしている彼の視線を追うと、一人の男性が静かにこちらを見ている。
言葉少なな降谷は自分からその人に声をかけることなく、またその人も何か話すでもなく球場を後にした。

第二試合の時間になったので、貴重な時間を割いて駆け付けてくれた先輩たちを見送り、皆もスタンドに腰を下ろす。しかし話題は先ほどの男性――降谷のおじいさんに興味津々で、彼を取り囲んでは「へぇ〜〜」「ほぉ〜〜」とうなずいていた。
倉持が振り返ってちょっと笑う。

「せっかく観にきてくれてたのに、出番なくて残念だったな」

こういう台詞がさらりと出てくるのが倉持の美点だよなぁ。

「そうか、アイツじいさんが東京にいたから北海道から出てこれたのか」
「まあそうだよな……何のアテもなく東京出てくるなんて、親が許してくれるわけねぇし」

麻生と山口の声が耳に入って、巴は二年前の秋のことを思い出した。
巴自身がまだ進路について悩んでいた、あの頃を。

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