そうだ、慰安旅行に行こう6

鳴はスマホを持ったまましばらく静止していた。
ちょっと軽い気持ちで大好きなあの子にメッセージを飛ばしただけなのに、なんだこの返事は。

彼女らしからぬ返事が来て、速攻でスタンプ送信した。
その後にすぐメッセージ送ったのにそれには既読がつかない。

“一也くんと一緒だから”

ふん、そりゃクラスも同じみたいだしな。一緒にもいるだろ。
でも、邪魔しないでとか言う!?てか普通に邪魔するけど!?
なんだこれ、ふざっけんな巴!
いや、つーかまさかこれ一也の仕業とか…

「くっそー…」
「鳴、そろそろ行くぞ。飲み物買ったのか?」
「樹が俺の分買いに行ってる」
「お前らは…ちゃんと自分で買えよ、金は渡せよ」
「雅さんそれは大丈夫。お金は渡してるって!」

飛行機乗ってる間に返事来るかな、とりあえず搭乗する。
青道の集団から遅れること10分、別の航空会社の長崎行きの便に乗り込む稲実の野球部が羽田空港にいたのだが、
もちろん双方そんな事知りもしない。

***

「あっという間に着いたなー長崎」
「気温とかはそこまで変わらねぇな」
「腹減ったー」

飛行機は定刻で長崎に到着。
少し遅れて稲実野球部がここを通過するとは知らず、早速目的地に向かって移動が始まった。
まずはお昼休憩を挟み、それから遊園地へと向かう予定だ。

「巴ー!こっち〜!」
とりあえず最初のバスの席は貴子先輩と座るように決めていた。
春乃や梅本たちマネージャーが一緒に座れるように、最後列の席にさっさと座った貴子先輩は周りのヤジなんて気にしない。

「へいへい貴子!お前らなんで一番後ろなんだよ!そこは俺たちだろー!?」
「いいじゃないたまには〜!」
「さっすが貴子先輩!」

座席に着いた巴はそういえば携帯の電源をつけ忘れていたと思い出した。
電源をつけると早速、成宮からのLINEに返事を返す。

『どこにいるの?私は今、長崎にいるよ。ごめん、飛行機乗ってたから』

既読は直ぐにはつかなかった。
とりあえずバスが出発するので、巴は再びポケットにしまった。


それから昼休憩の後、さっそく遊園地へとたどり着いた。
久々の娯楽施設に皆、早く行きたくてたまらないといった様子。

「妃先輩!一緒に回りましょうね!」
「うん、みんなで行こうね」
「お前着いてくるの?うざい」
「一緒の班でしょうが!!」

あちこちから、沢村うるさい、騒ぐな、うるせぇ、またお前か…なんて色んな声が聞こえてきて、猫目になっている沢村。
巴が「写真も撮ろうね」と声をかければ、一瞬にして笑顔になり返事が返ってきた。
またうるさいと怒られる沢村くん、旅行に来ても彼への扱いはいつも通りだ。
集合時間を聞き、フリーパスチケットで入場。

「じゃあ時間厳守でな!班行動、若しくはまとまって行動するように!
あっ、それからこの後ここに…」
「ふふ、みんな子供みたいですね走り出して…まぁ子供ですけど」

高島先生が呆れて笑っていた。心なしか監督も表情が少し柔らかい。
落合コーチは走り出す皆と風景を一緒に撮影している。

巴たちはいくつかアトラクションを回り、小休憩をとった。
ふと、皆の目に入ったのはまだ行っていない多分ここでかなり人気の場所。
一般的な呼び名で言うと、お化け屋敷…ホラーハウス。
夜の病院の怖さを十分に発揮している感じのとにかく怖そうな外観。

「面白そうだな、あれ…」
「ふぉぉぉぉ!妃先輩!いき、」
「行かない」
「早っ!!」

即答だった。
巴はホラーハウスから目を背け、行く気は一切ないようだ。

「5人一組くらいで入る?」
「ほら、途中に緊急脱出口とかあるってよ」
「使わねーだろそんなの」
「はっはっはっ」
「巴?ほら行くよ、なんなら抱っこしてあげようか?」
「あ、兄貴そんな強制しなくても…」

突然のことに首を横に振る。

「意外だな、月代でも苦手なものあるのか」
「俺も知らなかったわ。そーいや、お前昔からホラー番組とか絶対見なかったもんな」
「月代ちゃん、みんないるから大丈夫だぞ」
「いつでも抱きついて来てください!ウェルカムってやつです!だーっはっはっはっ!」

ダメだ、みんな聞いてない。久々のアトラクションでテンションが上がっているのだ。
そうこうしているうち、結局4人一組へと勝手に振り分けられてしまった。

「え、俺、月代と別!?」
「ヒャハハ!たまには別行動しろってことだろ!」
「残念でしたね御幸先輩!オレがしっかり巴先輩をエスコートしますから!」

くじ引きの結果、倉持、沢村、小湊弟、そして巴の四人組になった。
さきに御幸たちのチームが入場していく。
今日は平日のため他にお客さんもあまりいないため、自分たちのペースで入場ができた。

「おら、ずっと居ると余計に怖くなるぜ?」
「大丈夫ですよ巴先輩っ!俺につかま、つかまって、くだせい!」
「照れてないで行くよ、栄純くん」

とりあえず、四人で固まって歩いてもらうことにした。

「ごめん…怖くなったら、掴まって…いい?」

特に誰に向けて言った言葉ではなかったけれど、3人とも無言で頷いてくれた。




一方その頃、
「ねぇ!どこかにいるんだって!探してよ!」
「そのうち見つかるんじゃないですか?」
「なぁ、あれ怖そーじゃねぇ?」
「ほんとだ、面白そう…」
「はっ!!バカなの?あんなのつまらないって!それよりちゃんと探してよっ!」
「お前、怖いんだろ?」
「何言ってんの雅さん!?」

少し遅れて、巴たちがいる場所に近づいているのは、こちらも班行動中の稲実メンバーであった。

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