そうだ、慰安旅行に行こう10
「っ!うわぁぁぁ!!」
「おぉっ、ビビったー」
「ただの風じゃねーか!」
3人と4人に別れ、前後に連なって進む成宮たち。
前3人には、樹・平井・白河がいた。うるさくしているのは後ろ4人の方だ。
「こらぁー!樹!なんか出てくるんならちゃんと前もって教えろ!なんの為の前だよ!」
「その為の前じゃないでしょ!?」
「ムカつく!樹!ムカ…うわぁぁ!!」
「なんだよ鳴っ!くっつくな!!」
前の3人はわりと静かに「っ!おぉっ、」程度の声をあげていた。
風にいちいちビクついたりはしない。そんな時、横から誰かが飛び出してきた。
「あ、あの」
「うおっ!…えっ、えっ!?」
「あ、青道の!」
「……なんでこんなとこにいるの」
突然、前の3人が立ち止まった。
いつまたオバケが出てくるか分からないのに!一刻も早く外に出たい!
そう思った成宮はクレームをつけた。
「こらー!立ち止まるな!」
「いやっ、鳴さんそれが!」
「…鳴?」
聞き覚えのある声に、体が反応した。
やや薄暗いその先を凝視すると、そこにずっと探していた姿があった
「っ!!巴?妃かっ?」
「!…鳴、」
「ガァァアアアッ!!」
「キャーッ!」
「っ、わっ!」
多田野に話しかけている途中で、後ろに成宮がいることに気づいた巴。
ホッとした瞬間、どこからかやってきたゾンビのようなバケモノの唸り声で悲鳴をあげ、つい隣にいた多田野に抱きついてしまった。
「樹ぃいいっ!!離れろぉおお!!」
「ちょぉ!俺何も!」
「うるさい!離れろ!巴はオレに掴まるの!」
多田野から巴を剥がし、無理やりにも自分につかまらせる成宮。
その様子を見ていたカルロスが「お前、さっきまであんな怖がってたのに、巴連れて歩けねーだろ?」と言ってきた。
返事はなかったが、何それ?と言う表情だけが向けられた。
かっこいいところ見せたいんだな、同じように結論づけた原田と2人で、成宮と巴の両サイドを守る形で歩き始めたのだった。
「巴、震えてるの?相当やばくない?…けど大丈夫だ!オイラがついてるからな!」
「……行きましょうか」
「なんだよ、その間は!」
出口にみんなが待っていると思う、か細い声で言う巴。
じゃあ電話かけておけよと一言伝えるとスマホを取り出した。
どうやら御幸にかけているようだ。
しかし電話が繋がった瞬間、成宮がそれを取り上げた。
「あぁ、一也?巴は俺と一緒だから。安心して男たちだけで回ってきなよ」
「…は?えっ?お前…鳴か!?」
なりすましラインへの反撃だった。
***
「おいっ!もしもしっ!?おいこら、鳴!」
切れた…何で鳴がこんなとこいるんだ!?
しばらく放心した後、我に返り再び巴に電話するが出ない。
「御幸、今の電話…」
「鳴だ…なんであいつが」
「は!?鳴って、成宮鳴ですか?稲実のっ!?」
「なんでこんな所にいるの?」
「さぁ、分かんないですね…」
どうして鳴がここにいるのか分からないが…とりあえず出口で巴を待つしかない。
モヤモヤしつつ、その場で待つ事を決めた。
しばらく待つと、出口から出てきた稲実のよく見るメンバー。
なぜここにいるのかようやく謎が解けた。
が、しかし彼女の姿がない。同時に鳴の姿もない。聞けば、途中で緊急脱出口から先に出たと言う。
「純さん、どっか先に行ってて下さい。月代探したらすぐ追いかけますんで」
「あ?あぁ…別にそれはいいけどよ、一人で探すのか?」
「一応、鳴が一緒みたいですし、ちょっとした拉致未遂…」
そんな話をしていると、鳴のチームメイトが援護射撃を始めた
「よぅ御幸。拉致未遂って酷い言われ様だな、うちのエース様も」
「そもそも、そっちのマネージャーが1人であんな場所にいたから、こっちは助けてあげたんだけど」
「成宮、あの子見つけたら別行動するとか言ってたぜ?」
「…まあ、集合時間にはちゃんと戻ると思うがな」
カルロスや白河が言ってくるのはまあ分かるが、他の三年や原田までも言ってきたので少々面くらいながらも御幸は怯まず言い返した。
「はっはっ、あの場に1人残されたのにはちょっと理由があるんですよね、あと俺も別行動とかやってないんで。
…勝手な行動取られると困るんですよ」
表情は笑っているが、声がいつもより低いな。
青道チームメイトはこっそりそんな事を思う。こいつ、他校の3年にまでこの調子か。
「じゃ、俺たち次行くわ、またなー御幸。皆さんもまた」
「じゃあな、結城達はどのへん回ってるんだろうな」
ぞろぞろとその場を離れて行く稲実メンバー。
「また」はねーよと思い、大きくため息をつく御幸。
時間を伝えて1人で巴を探す事にした。
***
「怖いけどさ、そんなにビビるかぁ?でも巴がお化け屋敷っていつぶり?小学…」
「…鳴だっていつも入らないのに…何で入ってたの…」
「何言ってんの!俺はそういうのとっくに克服してんの!男なんだから」
あのあと歩き始めたが、やっぱり無理だという巴のためすぐに脱出口から避難を決めた。その時に一緒に外に出たのが成宮だった。
「そこのテーブル座ってな、なんか飲み物買ってきてやるから」
「うん…ありがとう」
飲み物買ってきてくれるなんて、珍しいなと思って少しだけ笑っていると「何笑ってんだよ」と2人分の飲み物を持った鳴がもう戻って来た。
「…早かったね」
「怖いのにひとりにしないよ、俺はね」
「……」
「…なっ、なんだよっ!」
「…ううん、ありがとう。もう外に出たから怖くないよ」
道のあちこちに設置してある丸テーブルに向き合って座り、一緒にジュースを飲み始める。
「あ…皆に連絡しないと」
「別に大丈夫だって、雅さんたちがちゃんと伝えとくって言ってたじゃん」
「でも、待ってるかもしれない」
「だからまだいいって、集合何時なの?」
「…あと2時間」
「じゃ全然大丈夫じゃん!」
「……鳴はいいの?」
「なにが?鳴も稲実の人と一緒に回りたいのに、私のせいで…」
「はぁ!?なんでそーなんの?そもそも男だけで回ったってなんも楽しくねーから全然いーの!オレは巴と別行動するって言ってあるし!」
「…そう」
「……しょーがないなー、オイラから一也に連絡しとく」
「いいよ、私がする」
「いいから!その代わり連絡したら一緒にアレ乗って!」
そう言って成宮が指さしたのは、大きな観覧車であった。