そうだ、慰安旅行に行こう11

「すごい、景色が一望できるね」
「だろ!この遊園地ちゃんとチェックしといたんだよ」

成宮が御幸にメールを送ったということで、結局巴は言われるがまま二人で観覧車へと乗った。
お互いの慰安旅行の行先なども確認していると、驚くほど予定も似ていたことが分かり、成宮が「できるだけ一緒にいたい」と言うので流石にそれは先生に聞いてみないと分からないと答えておいた。

巴は久々に見る上空からの景色を嬉しそうに眺めている。
そんな彼女の隣に座る成宮は景色というより、景色を眺める巴を見つめていた。

「…久々に二人きりだな」
「そうだね、お互い時間もあんまりないからね」
「なぁ…なんでお前青道行ったんだよ」
「また同じこと聞く……前にも言ったように、特に意味はないの」
「絶対嘘だね。巴は昔から嘘つくの下手だからすぐ分かるし」
「……別に私がどこに行っても関係ないでしょ」
「関係なくない!そもそも巴が言ったんじゃん!甲子園に連れてって、て!」
「あれは、その、子供のころの話」
「ついでにお嫁さんにして、とも言ってたよ」
「もう、や、やめて」

巴が手を前に出し制してきた。
雪のような肌に桜色の頬をし照れた様子の彼女はいつもの冷静さを失い、とても愛らしかった。
すると成宮はそんな桜色の頬に向かって手を伸ばした。

「…?」
「巴、オレ…」

そのときだった。
巴の後ろ側の窓から見えたのは、観覧車からは離れているが高台に立って双眼鏡で誰かを探している御幸。
誰かとは巴のことで間違いないだろう。先ほど成宮が送ったメールはお気に召さなかったようで、今も血眼になって彼女のことを探しているらしい。
双眼鏡であれば流石に観覧車のなかにいても見つかる、と思った成宮は邪魔されてたまるかとそのまま巴を後ろに押し倒した。

「鳴、!?」

驚いていた巴だったが、何故か成宮は反対にすこぶる落ち着いていた。
御幸に見つかれば必ず観覧車の下に待ち構えているだろう。
そして巴を連れて戻ろうとする。元々青道野球部で来ているのだから、一緒に行動するのは当然だ。

彼女のもう一人の幼馴染の御幸が、巴のことを好きなのは随分前から知っている。
お互いがライバルなことを向こうも知っている。
だからこそ、成宮にとっては今巴と二人きりでいるのはチャンスだった。
御幸と違って自分はいつでも一緒にいられるわけはないから。

「巴、ここのジンクス知ってる?」
「ジンクス?」
「そ、頂上でキスしたカップルは永遠に結ばれるんだって」
「……キス…?」

成宮が巴に向けて顔を近づけた。

頂上につくまでもう僅か。
二人の唇が重なるまで、もう僅か―――



「ま、待って!」

だった。
巴が自身の顔に手を被せたのだ。

成宮もこれは予想の範囲内ではあった。
自分が彼女を好きでも、彼女も自分のことを好きでなかったら意味はない。しかし、

「…こ、こういうのって……恋人同士になってから、だと思う」
「………」

真っ赤な顔、小さな声だった。
でも、まさか、まさかそうくるとは。

「え、巴、それって、」
「分かんないけど、恋人同士じゃないのにするのは……ふ、ふしだらに…なっちゃうから…」


―――オレの幼馴染が可愛すぎる件を誰か聞いてほしい。

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