そうだ、慰安旅行に行こう12

観覧車から降りてきた二人の前に走ってきたのは、

「やっと見つけた…ハァ…ッ」
「っ、一也!」
「御幸…」

巴のもう一人の幼馴染であり、成宮にとってのライバルである御幸だった。

***

俺がその場にいないのをいい事に、どこかに連れていってるんだろうと思って遠くばかりを探していた。
近くの土産屋で双眼鏡まで買う始末。
一体どこまで連れてったんだ鳴のやつ!

高台で様々なところを覗いていると、観覧車から降りてくる二人を見つけた。
まさか二人きりで乗ったっていうのかよ、ああクソ。
さんざん走り回って疲れていたけど、やっぱり見つけたら走ってしまった。

「やっと見つけた…ハァ…ッ」

鳴も巴もやっと俺に気づく。

「ご、ごめん、そんなに探してたの?でも鳴、メール送ったって…」
「懇切丁寧なメールをね!」
「そりゃどーも、こんなメールきたら嫌でも探すけどな」

御幸が巴にも見せたメールの内容は以下の通りだった。

『巴はこれからオレとデートしてくるから安心しなよ!
集合時間には間に合わせるけど、巴がオイラのこと離したくなくなるかもよ?
一也はむさ苦しく男だけで回ってくれば〜?』

完全に挑発している文章である。
これを見たときの御幸は思わず携帯を握り潰しそうになったらしい。

「…私が鳴を離したくなくなるって何?」
「いいじゃん!久々にオイラと遊べて嬉しいだろ?巴は素直じゃないから、オレが代弁してやったわけ!」

観覧車から降りてきて成宮は何故か上機嫌だ。
二人で何かあったのだろうか。御幸は自分のいない間に二人が何をしていたのか、考えるだけで苛立ちが止まらない。

「ウチの部員、勝手に連れまわさないでくれますかねー?稲実さん」
「はぁ?そっちが巴を置き去りにしたんだろ、てか巴がお化け屋敷とかマジ信じらんねー。
何があっても絶対に入らないやつなのに」
「えっ…」

そうなのかと巴を見ると、コクリと頷いている。
そう言えば苦手だって入る前に言っていたな、と思い出す。
鳴はさらに棘のある言い方で俺に言ってきた。

「こいつ、お化け屋敷入ったら腰抜かして歩けなくなるの!
もう長いこと入っていないのに、何入れてんだよ」

幼馴染のオレは巴のことをよく知ってるけど、お前の方は全然知らないんだなと言わんばかりの言葉に御幸は
何も言えなかった。
御幸は巴と家が近かったし小学校から一緒だが、成宮のように家族ぐるみで旅行に行ったことはない。
学校や家でのことなら詳しくても、外に出てみればこの差だ。

…なんて思ってるのは悟られないように、表情には絶対出さない。

「鳴、原田さんたち港の方に行ったぜ?あっちの」
「あぁ、オイラも行くよ」

鳴の事だから駄々を捏ねると思ったが、すんなり受け入れた。
しかも、巴の隣じゃなく俺の隣に並んで来た。…なんだ?

「そーいや、センバツ出場おめでと」
「あぁ、サンキュ」
「良かったな、卒業までに甲子園行けて。夏は行けないしね!」
「えっ、なんて?甲子園なら青道が春夏連続出場するけど?」
「聞こえないね!」
「耳遠いんじゃねーの?」
「はぁぁ!?あ!一也お前!そう言えば朝のラインの――…」

恋のライバルでもあり野球のライバルでもある二人を見て、どこか似ているようだと巴は思った。

***

その後、稲実と青道がまさかの大集合。試合の時は敵同士、けれど今は普通の高校生。
みんな純粋に旅行を楽しんでいる様子で和やかだった。
だけど少しだけ沢村がソワソワ。恐らく白河がいたからだろう。
御幸がさりげなく近づいて「もう済んだ事だぞ、向こうも気にしてねぇし」と声をかけていた。
それを隣で聞いてた倉持がいつものタイキックを入れて、沢村も普通に戻る。

「そろそろ集合場所行くか」
「そうですね、じゃあまたいつか試合でなー」
「試合の前にまた会うんじゃないか?」
「会わねーだろ」
「巴またなー!」
「うん、え?」
「だからまたっていつだよ…」

稲実メンバーは少しだけ含み笑いをしながら去って行った。
ニヤニヤして気持ち悪いな、なんてみんな口々に言いながら集合場所に向かっている。

青道御一行が集合場所に向かう頃、稲実御一行もまた別のルートから集合場所に向かっていた。

「あいつらさ、やっぱマジでしらねーんだな」
「また会うのにな、思いっきりよー」
「あっちの先生が今から言うんじゃないんですかね?」
「それはありえるかもな」
「鳴、お前今日チャンスに恵まれてんじゃね?」
「カルロうるさい」



バスに乗り、1日目の宿泊ホテルに向かった青道高校。
建物に入るときにまた一斉にどよめきが起きた

「おい!歓迎のっ、青道の隣!稲城実業…だって!?マジかよ!!」
「ホテルが一緒だと!?」
「またって…そういう事かよ…ちっ、」

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