そうだ、慰安旅行に行こう14
稲実の奴らが純さん達の部屋に…?
なんでマネージャーも参加なんだよ、せっかく2人で話そうと思っていたのに。
少々ジト目で先輩たちの席を見ていると亮さんが俺に気付いた。
「…どうかしたの、御幸?」
「いえ、別に…何も」
「ふぅん、あ、お前も来る?稲実の、」
「行きます」
「もう情報行ってるんだ?早いねー」
「はっはっはっ、そうすか?」
亮さんが笑顔だったから、俺も笑顔で返しておいた。
とりあえず風呂行くか……。
***
なんでこうも行動時間がかぶるのか…
倉持達と風呂に行くと、哲さんたちはいるわ沢村たちはいるわ、稲実のやつらまでいる。
一般人は泊まってないのかと思うようなメンツだ。
とりあえず寮よりもデカい風呂が目の前にあるし、露天もあるし、さっさと洗って湯船に入ろう。
「風呂出たらすぐ行くかー?純さんのとこ」
「あぁ、」
「ヒャハ、だよなぁ?稲実のやつが来るんだろ?
月代目当てにアイツ来るんだろ、ほら…成宮とか」
倉持が視線を向けた斜め後ろの方向には、既に湯船に入って偉そうにしている鳴がいた。
まあ一番の理由はそうかもしれねぇけど、早めに切り上げて巴とそのへん散歩でもするつもりでいる。
「昼間どうだったんだ?2人でいたんだろあいつら」
「どうって…特にねぇよ」
なんかあるわけないだろ、鳴が巴と一緒に観覧車から降りてきたあの場面を一瞬思い出したが、お湯と一緒に流した。
「おぉ〜!気持ちいい〜」
「よぅ。お前ら来てたのか」
「はい、露天風呂行きました?」
「これからだ」
なんだかんだ、十人くらいでゾロゾロと移動して露天風呂の方へ行ってみた。
そこには稲実メンバーがいて、一瞬立ち止まったが、「そんな格好で立ち止まるなよ!」とクレームが出たから、そのまま湯船に続々と入ることにした。
「…ふー」
「…」
「…」
「気持ちいいな」
露天風呂での静かな空間、癒される。
…と、そこへ隣から甲高い声が聞こえてきた。
「わぁー!広い!貸切みたいですね!」
「ほんとね、気持ちよさそう!」
「春乃ちゃん、滑るから気を付けて」
「「「「 !!」」」」
隣は、女湯の露天風呂なのか!
全員が顔は動かさなかったものの、視線だけを一斉に壁の上にやった。
天井まで仕切られていないため、けっこう筒抜けだ。
巴の声も聞こえて来てうちの女性陣が入って来たのにすぐに気付いた。
「今の、マネージャー?」
「…巴の声がしたっ!」
「おい鳴、恥ずかしい行為だけはやめろよ」
「何言って!やんないって!」
途端にこそこそ話し出す男チーム。俺は二、三回顔を洗い息を吐いた。
隣で倉持が「今さら覗きとかなぁ?御幸くん」と呟いている。もちろんスルーした。
「そういえば貴子先輩と高嶋先生はどうされたんですか?」
「もう少しあとで入るって。お部屋でお茶飲んでたから、ゆっくりしてるんじゃない?」
「にしても良いお湯〜!ね、巴!」
「うん、温泉って久しぶり」
「………」
「どしたの春乃」
「あの、巴先輩!」
「?」
「どうしたら巴先輩みたいにスタイルよくなりますか!?」
すると突然そんな質問が聞こえてきた。
誰一人、しゃべらない男湯露天風呂。
「え、」
「それは私も気になる!」
「ぶっちゃけ…、デカいよね胸」
ブフッ…
吹き出したのは、たぶん稲実の誰か。いや、青道にもいるな。
つーか、女ばっかだとこんな事言うのか…ははっ。
「そ、そんなまじまじ見なくても…」
「ねぇ、ちょっと触ってもいい?」
「あっ!私も!触ってみたい!」
「え、じゃ…じゃあ私もいいですか!?」
「…冗談でしょ?」
バシャバシャッーー
水しぶきが聞こえてくる…一体、何が起こってるんだ。女湯は…。
あー、ってかオレも巴の触ってみたい。
楽しそうに話しているマネージャー達の声を聞きながら、腕を伸ばして湯船の中で再度くつろいだ。
「わっ、マシュマロみたい!柔らかい!」
「手から溢れますよ!」
「や…っ、くすぐった…」
――マシュマロ、柔らかい、手から溢れる…。
なんとなく、自分の手の平を見つめた。
ふと、周りを見渡してみるとほぼ全員が話を聞いていたのか、自分の手の平を見つめていた。
ただ見つめている者、指先をちょっと曲げている者、何かを包むようにいかにもボールを握っているような形を作っている者…
おい…こいつら…。
バシャン!!
「「「「っ!!」」」」
ハッと思い、手の平で水面を叩き音を立てた。
一斉に我に返る男湯…俺は盛大にため息をついた。
アイツら…何で巴の名前出してんだよー、ハァ。
何か巴のあのちょっとエロい声聞いてたやつ……こんなにいるのが気に食わねー。
「…やっぱ形だろ」
「感度じゃね?」
今の…巴で想像してねーだろな特に今フリーのやつ…。
鳴は――そう思ってあいつを見ると、ちょうどアイツも俺の事を見てきた。
無言で少々睨み合う。
「…」
「雅さん、もう上がろ?」
「あぁ…そうだな」
稲実のやつが先に上がるようだ。
後でなと声をかけているところを目で追っていると、出入り口の扉が開いた。
「あっ!!皆さん!お揃いですね!俺も混ぜてください!」
「沢村が入る場所ないよ?」
「酷い!お兄さんっ!」
たった今、露天風呂に移動してきた沢村。
こいつが聞いてたらたぶん大声出してたに違いない。セーフだったな。
しかしこいつの動物的感なのか何なのか分からないが、すぐに隣が女湯だという事に気づいた。
完全に猫目になった沢村は、なんとかして壁の上の方まで行けないかと模索しているようだった。
「何か見えるのか?沢村…」
「っ!ボス!すっ、すいやせん!!」
さらに少し遅れてやってきた監督により、やっと湯船に飛び込んだバカ。
上がるか…。