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「「したあ!!」」

12月30日。グラウンドに整列した選手たちを迎えたのは、眩しいほどの太陽。
厳しい、厳しい練習をやってのけた選手たちの目には涙が浮かんでいたとか。

その後、荷物をまとめて学校の最寄り駅である西国分寺駅までの道のりをみんなで歩く。いつもの道に、寮組がいるのはなかなか珍しい光景。そんなみんなの表情は、とても晴れやかだった。

久しぶりの実家、久しぶりの家族。少しの間の休みだけど、ゆっくりしてきてほしい。

「巴はお正月でかけるの?」
「うん、母方の実家にね。幸子ちゃんたちは?」
「わたしは特にないなぁ」
「わたし初詣行くよ〜」
「彼氏だな?」
「へへ、彼氏です」

マネージャー内で唯一の彼氏持ちの夏川。
異性交遊についてまだよく分からない巴ではあったが、嬉しそうに話す友人の様子を見てつい心が綻ぶ。

「巴にも彼氏みたいなもんがいるだろ」
「ほら、お迎えきてるし」

二人が続けて言った先には、御幸がいた。

「巴ちゃーん」
「…何」
「えっ俺なんかした?」
「別に何も」

御幸が足を止めたから、必然的に巴も足を止めた。その間に夏川たちは手を軽く振って先に行ってしまった。
家が向かい同士の御幸とは当然帰る方向も同じだ。
御幸は当然のように巴の隣に立って歩き始める。昔の登下校を思い出させる。

「年末、何して過ごす?」
「ごめん、今年は大晦日からお婆ちゃんの家だから」
「え”!?」

親同士が仲の良い二人。御幸の父親は年末こそゆっくり過ごせる時間であるため、父親を気遣ってか御幸はいつも巴の家にお邪魔していた。勿論、巴の両親も大歓迎とばかりに彼を迎え入れていた。
だから毎年年末は一緒に過ごしていたため、今年もそうだろうとばかりに思っていた。しかし、まさか大晦日から彼女は母方の祖父母が住む実家へと行くという。

「なぁそれってアイツに言った?」
「あいつ?」
「鳴だよ、鳴。お婆さんちってつまり、鳴の家と隣同士じゃん」

巴の母方の実家は成宮家と隣同士であり、小学校まで彼女はそこに住んでいたのだ。
つまり、正月帰省している成宮と出会う可能性もあるということ。

「言ってない。もしかしたらお婆ちゃんが鳴のお母さんとかに言ってるかもしれないけど、私は鳴に直接言ってない」
「ふーん…」
「……寂しいの?」
「バッ、ちげーよ」

今年は一緒に過ごせないため、御幸が寂しがっているのかと思えばそうでもないらしい。
しかし御幸の本心は、言葉とは裏腹に勿論違った。
巴に本気で惚れている鳴のことだ。それも最近はなんでも告白に近いことまで言っているころから、巴がいると知ったら、どう考えてもこの正月中に彼女にアプローチするに違いない。
野球でも恋愛でも強敵だが、今回ばかりは分が悪そうだ。

「牽制」

御幸はそう言いながら自分のマフラーをとり、そのまま巴のつけているマフラーもスルスルと解いていく。
肌寒くなった彼女の首には、新しく御幸のマフラーが巻かれた。

「ちょっと、」
「これ、預かっとくな」
「なにそれ……御幸がソレ付けるならいいよ」
「え。まあ、紺だからいけるかな…」

巴の付けていた紺色のマフラー。御幸の手にあったソレを奪って、つま先で立ちながら御幸の首に巻く。

「巴ちゃん、あの嬉しいんだけどちょっと苦しいかな」
「我慢なさい」

年明けまでの数日間、きっと自分はこのマフラーをつけたくて用もないのに外に出る。

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