09
「何で卒業生の私たちが花飾り作らなきゃならないのよー」
『まあまあ…』
花飾りは毎度行事で使うからかすぐボロボロになる、
それを補充するために勤めが1番短い、いわばしたっぱのN先生が任せられた…のを、私たちが手伝う
「仕方なく手伝っているんですからね、帰り何かおごってくださるんですよね、N先生っ!」
「んー、分かったよ」
有無を言わさないブルーの笑顔にN先生はたじたじ
その表情を見るやいなや、ブルーは突然ニヤりと笑って耳打ちをしてきた
「…知ってた?○○、N先生の家めちゃくちゃ大きいんですって!たくさん部屋があって、しかも親バカのお父さんがN先生をいつまでも子供扱いして、積み木とか人形とかたくさん買い与えてるんですって、可愛いわよねぇ」
耳打ちとは言えない声の大きさでN先生の家庭の事情が明かされる。この2年でN先生のボランティアに関わってきたけど、そんなに甘やかされて育ったなんて思えない。
『…色々と、凄いね』
「君たち丸聞こえだよ?」
「あは、卒業したら2人で遊びにいきますから」
「はぁ…、待ってるよ」
困ったように笑っているけど、何だか嬉しそう
「あ、レッド!」
「なに?」
たまたま通りかかったレッド君をブルーは呼び止めた
「あんたも花飾り造るの手伝いなさい!」
「早く帰りたいんだけど」
「文句言わない!」
面倒くさそうにするレッド君を、ブルーは強引に腕を引っ張り連れてきた
「○○、レッドに造り方教えてあげて」
『あ、うん』
「………」
嫌がる人に無理矢理っていうのは気が引けるな―あからさまに不機嫌だし
「○○、どうするの?」
『えっ!あ、えーっと―』
いつの間にか私が造ったばかりの花飾りを手に取り、
不思議そうな顔をしていた
「掃除場所はコレで決まりね、今から15分掃除です」
「えー、ゲン先生!あたしレッド君と一緒が良いー」
「それなら私だってグリーン君と一緒になりたーい」
「わがままはダメだよ、もう決まっちゃったんだし」
「「えー」」
掃除場所の振り分けされたプリントに不満を漏らす、
取り巻きの女の子たち
嫌だな、レッド君とグリーン君と一緒の掃除場所だ―ブルーも同じだけど
「ねー、○○さん、掃除場所変わってくんない?」
『えっ…』
「良いでしょ?○○さん2人に興味無いみたいだしさぁ」
『あ、あの―』
「ちょっと、ゲン先生がわがままはダメって言ったでしょ、ちゃんと守りなよ」
『ブルー…』
「はぁ?あんた2人の幼なじみだからって調子のってんの?」
「何で知って―」
「グリーン君が教えてくれたのよ、昔っから、頼りない女だってね」
「あいつ…!」
「まっ、掃除場所くらい譲ってあげるわ、どうせ仲悪いんだし?」
「っ、ありがとう、…○○行こう」
『あっ、うん…』
「あぁー!腹立つ!」
『誰に?』
「あの女も、グリーンも!どんだけあたしがあいつに迷惑かけられているかも知らないでグチグチと!」
『あはは…―』
「はぁー、あたしはあまり気にしない方だけど、○○はあんな女の言うこと気にしちゃダメよ、ただのヒガミだから」
『…うん、ありがとう』
「いえいえ、さて、掃除しますか!って、元凶のあいつら2人は?」
『また女の子たちに囲まれてるんじゃない?』
「とことんムカつく奴」
しばらくしてレッド君が来た
「遅い!」
「…ごめん」
また女の子たちに囲まれていたのかな?凄い疲れ顔
『はい、…レッド君も箒』
「ん、ありがとう」
「あ、そうだレッド、この子は同じクラスの―」
「○○、でしょ」
『あ、はい』
私のこと知っていたんだ
名前も―
「ちょっと、いきなりあたしの○○を呼び捨てにしないでよ!」
「はー、まいったなぁ」
レッド君に掴み掛かろうとしたブルーの後ろから、ようやくグリーン君が表れた
「あっ、てめ、グリーン!あたしに謝れー!」
「は、ちょっ、何だよ?!」
『…行っちゃった』
「前に―」
ブルーとグリーン君を目で追いかけていたら、レッド君が声をかけてきた
『あっ、うん』
「前に目が合ったよね」
『そう、だね…覚えていたんだ』
「みんなとは違うから」
『みんな…っていうと、周りの女の子たち?』
「うん」
『そうかな…?』
「うん」
微かにレッド君は笑った
「○○ーもう掃除終わるから、片付けよー!」
『うん』
レッド君って、もっと無愛想で無口ってイメージだったけど―違うんだ
「戻ろう」
『…うん』
私の名前を呼んでくれた
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