プールの話
「おい、力抜け」
「ん…ふ」
「…足着いてんじゃねぇ!!クソが!!」
ボンッ!と爆豪の手の平が爆ぜた。
夏休みに入ってすぐ。ここは学校のプールである。日差しがじりじりと照り付け、蝉がミンミンと騒がしい。なまえが立ち上がると、チャプンと小さく水が跳ねる。
「で、でも。沈んじゃうよ…?」
なまえは眉根を下げ、プールサイドに仁王立ちしている爆豪を見上げると舌打ちされた。
ことの始まりは夏休み前。
早々に帰ろうとする爆豪をなまえは慌てて追いかけた。
「爆豪君、あの」
「あ?」
「夏休み、トレーニングとか、する?」
「当たり前だろうが」
「あのね、トレーニングついでに、お願いがあります…」
爆豪はまず、戦闘訓練の相手かと考えた。
学校の施設は許可を取れば使用していいことになっている。
今までの戦闘訓練ではなまえには傷一つ付けれていない。なまえの個性が本人よりも早く危険を察知し、彼女を守るからだ。それに加え、棘を地面に突き立て爆風に飛ばされないようにするという小賢しい真似をしてくるなまえが相手ならば、まぁそこそこトレーニングにはなるだろう、というかこの際ぶっ飛ばしてやりたいという思いがあったために爆豪は口の端を上げ「なんだよ」とそのお願いとやらを聞いてやることにした。
なまえはというとダメもとのお願いだったので、きょとんとした目で爆豪を見つめる。それも束の間で、ざわざわとクラスメイトの声が近付いてくるのに気付いて、なまえは慌てて爆豪の腕を掴んで階段を駆け上り、踊り場の死角に連れて行く。クラスメイトが通り過ぎて行ったのを確認して、ふっと息をつきなまえは話を切り出した。
「あの、プールの使用許可とるから、泳ぎ方、教えて欲しい」
「…は?」
「…泳げなくて、んん、泳いだことなくて」
嘘だろ。ヒーロー科だぞここ。もちろん後々は水難救助もあるだろう。まぁだからこそなのだろうが、嘘だろ。
「学校で水泳無かったのかよ」
「小中学校は、施設の学校というか、小さいところで、プール無くて」
「他の奴に頼めや!」
「爆豪君口堅いし、ヒーロー科で泳げないの、多分私だけだし、恥ずかしい、から。切島君が、爆豪君厳しいけど教えるの上手だって言ってたし」
恥ずかしいという自覚はあったらしい。
眉を八の字にして、頬を紅潮させなまえは俯きがちに爆豪を見上げる。固まっている。はたとなまえにある考えが浮かんだ。
「もしかして、爆豪君も、泳げない…?」
なんでちょっと嬉しそうに言ってんだ。ピキッと爆豪のこめかみに青筋が立つ。
「泳げるわ!クソが!舐めんな!」
「そっか、そうだよねぇ、爆豪君、大体なんでも出来るし」
なまえはしゅんと呟く。
「