定期連絡は大抵生存確認


店主は乗船にも立会い、「カンポウの爺によろしく頼むでー!」と見送りながらアッシュに大きく手を振った。
どうやらアッシュが思っていた以上に薬屋はアッシュに好感を持ってくれたらしい。
盛大に見送られ船に乗ること数時間、アッシュは再びアサギシティへと降り立った。
イーブイは疲れた為かボールに戻っており、アッシュはさてどうするかと考えつつ、思いっきり伸びをして凝り固まった筋肉を解す。

「あー、船は揺れるから苦手だなぁ。さて、これからどうするか……」

とりあえずまだ時間があるからエンジュまで戻れるかなと思ったところで後ろからボーッと大きな汽笛が聞こえてそちらを振り返った。
何処からかは分からないが、なかなかに大きな船が停まっており、続々と人が乗り降りしているのが見える。

「おー、でかい船だ……なぁ!?」

その船を眺めていると突然、後ろからガシっと肩を掴まれる。
たたらを踏みつつ一体何事かと振り返ると、昔から見慣れたけれど記憶よりも大分大人びた姿が目に映った。

「あ、」
「おーまーえーなー!!」

鼓膜が破れんばかりに叫ばれて後ろへと仰け反ったアッシュだったが、あまりにも懐かしい姿に「グリーン、久しぶり」と思わず片手を挙げた。

「久しぶり、じゃねぇよ!」

至近距離で力の限り怒鳴られ、アッシュは無意識に自身の耳を塞いで音を逃がした。

「二年も音信不通になりやがって!」

どいつもこいつも!!と怒るグリーンは般若のような形相でアッシュの両肩を掴む。
アッシュを越えるほどではないが数年で身長も伸びたらしく、大分顔の位置が昔よりも近くなっている。
大きくなったんだなぁとアッシュが感慨に耽っている間、グリーンはひたすらアッシュの文句を並べていた。
それもその筈で、アッシュは数年前……というかいつの事だったかは忘れてしまったので定かではないが兎に角カントーを旅立つ際、グリーン達に何も言わずバイト探しの旅に出たのである。
面倒な事になったと思わないでもないが、自身が悪いのは百も承知である。
とはいえ、母親には言伝を頼んだはずだが聞かなかったのだろうか。
とりあえず今は何を言っても無駄だろうと思い往来で始まった説教を甘んじて受けることにした。

そうしてひとしきり文句を言って落ち着いた頃を見計らい、アッシュが一言「悪かった」と返すと、一体何処にいたんだと睨まれた。
「コガネに」と言うと、グリーンは頭を抱えて「何度も来てるじゃんか俺ー!」と叫びだす。


「……あれ?母さんに聞かなかったのか?」
「そのおばさんも突然旅に出るとか言い出して帰って来てないんだよ!」

成る程、だから家に連絡しても出なかったのかと納得する。

そのままグリーンから詳しく話を聞くとアッシュが引っ越して早々にポケギアを紛失した二年前、何も知らないグリーンとレッドはアッシュに会いに来ていたのだという。
だがアッシュの部屋はもぬけの殻で、慌ててアッシュの母親に尋ねると「ちょっと新しいバイトしてくるって言ってたわよ」と返された二人は呆然とする。

アッシュの母も母で何処へ行ったのかは忘れてしまったらしく、「そのうち連絡くるわよー」なんて笑っているうちに一年が経過してしまった。
手持ちもいない、旅にだって出たことのないアッシュが音信不通になり流石に心配したグリーンとレッドがあちこち探したりが成果はなく、彼らの中でアッシュは行方不明扱いであったのだという。
その後もう一度アッシュ宅を訪れると、アッシュ母はゴーリキーを連れて旅立つところだったらしい。

「グリーン君、うちの子から連絡来たらよろしくねー」

おほほほ、なんて笑いながらアッシュ母まで旅立ってしまい、その後結局親子共々帰ってこないままだった。
どこへ行ったのか分からない以上仕方ないとじっと待つこと一年、アッシュから連絡が来たと言ってリザードンで文字通り飛んで帰ってきたレッドにより生きていることが発覚したらしい。



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