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「……あー、それは何だが悪いことをしたなぁ」

この親にしてこの子ありとはよく言ったものだと他人事のように思いながら呑気にアッシュが呟く。
すると渋い顔をしたグリーンが腕組みしたままアッシュを睨みつけた。

「そもそも何で俺達に黙っていなくなるんだよ!」
「いや、だって言ったらお前ら止めるだろ」
「だからって黙っていなくなる馬鹿がいるか!」
「いやぁ……」

アッシュ達の故郷であるマサラタウンには子供が殆どおらず、アッシュの友人は年下のナナミとグリーン、レッドの三人しかいなかった。
そのためか特に同性の二人はやたらとアッシュに懐いており、小さい頃は何かとアッシュの元へと来ては構え構えと煩かった。
八つも違う為それが可愛いと思えるのだが、その弟分達はそれぞれ旅をしたことできちんと自分のやりたい事を見つけて帰ってきた。


レッドは最早伝説とまで言われるポケモントレーナーになり、グリーンもトキワのジムとオーキド博士の助手を兼任している。
当時やりたいことも特になくバイトばかりしていたアッシュは正直いって焦っていた。
やりたいことも無く、かといって1箇所に留まることもせずあちこちふらふらしていたが2人のそんな姿を見て流石にそろそろ自分の人生を考えねばならないと思ったのだ。
……思ったのだが、あまり人に話す性分ではなかった為一人決意をして母親にだけバイトしてくると告げてマサラタウンを旅立ってしまったのだった。

「あー、言えば良かったな」
「そうだよ!言えば俺達だって納得したわ!全く、レッドといいお前といい!」

グリーンの言葉でそういえばレッドも同じように三年程音信不通になって怒られていたなぁとアッシュは思い出す。
その時もアッシュはレッドの事だから強いトレーナーでも探して籠ってるんだろうと呑気に構えていたが、グリーンは違かったはずだ。

「あー、そうか。心配させたんだな。ごめんな」

自分の気まずい思いやら葛藤やらで手一杯だったアッシュは今更ながらそのことに気づき眉を下げた。

「全くだ!とにかく、一度戻って来い!!」

爺ちゃんも心配してるから、と言われまたもや心苦しくなる。
実はその爺ちゃんことオーキド博士とはたまに連絡を取っているのである。というか、たまたまコガネへラジオ収録にきたオーキドにバイト帰りのアッシュが見つかったのだ。
グリーンが知らないということは、面倒なので黙っていてくれとアッシュが咄嗟に頼んだのをオーキドは守ってくれていたのだろう。
そう思うとそれはそれでまた心苦しいものがある。

「また今度帰るよ」
「そう言って忘れるだろう!」

まあ確かにと思いつつもアッシュが無言でいるとグリーンに半目で更に訴え掛けられる。

「だいたいそう言って有耶無耶にするからな。兎に角!!俺は明後日あたりにはカントーに戻る。その前に連絡するから絶対通信出ろよ!」

良いな!と念を押されアッシュは分かった分かったと両手を軽く上げ降参を示したのだった。


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