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キキョウシティに着いた翌朝、ポケモンセンターの一室にてアッシュはいつものようにお腹を空かせたイーブイの奇襲で目覚めた。
突然腹部への衝撃と痛みに文字通り飛び上がる。膝を折り曲げて唸っているとすぐそばで鼻を鳴らすイーブイがいたのでそこでようやく奇襲されたのだと理解した。
 
「痛たたた…」
 
頭突きを食らったらしいお腹を気休めに擦りつつ、アッシュはベッドから起き上がる。
さすがに歩き通しだった為やや疲れが残っているが、歩き回れない程ではない。昨日は見る余裕がなかった為、改めて部屋の中を見渡す。
ポケモンセンターの宿泊内は地下か地上かの違いはあるものの、何処の街でも配置や家具はだいたい同じであるらしい。
 
足元には昨夜イーブイが寝ていたタオルケットが転がっていた。
イーブイはタオルケットの中でその後も大人しく寝ていたらしいのだが、朝になってもなかなか起きないアッシュに痺れを切らしたらしい。
ベッドへと上がるとアッシュの鳩尾へとダイブしてきたのだ。
おかげでアッシュの腹は盛大に赤くなった上に、前日殆ど食べてないせいか何となく気持ち悪いような重さが感じられる。
なんだろうか、なんとなく胃もたれに近い感じだ。それが空腹のせいなのかタックルされたせいなのかいまいち判断がつかない。
とはいえ、これ以上暴れられては堪らない為、イーブイと共にセンター内の食堂へと向かう事にした。
 
 
起こすことに成功したイーブイはとても満足したらしく、上機嫌に尻尾を左右に揺らしながらアッシュの先頭を歩いていく。
腹部の痛さに怒る気も失せてしまい、アッシュは大人しくイーブイの後を追うようにして廊下を黙々と歩いていく。
食堂へと到着すると、二人がけ用の小さなテーブルへと腰を下ろす。
足元のイーブイには小皿を貰っていつものフーズを入れてやり、アッシュ自身は甘酸っぱい木の実と甘さを控えたクリームを使ったサンドイッチとサラダを注文する。食欲がないと言ったが、アッシュは朝から甘いものでも美味しく食べれる人種である。
弟分達に言わせれば有り得ないらしいが、甘党のアッシュはむしろ甘くなければ元気のない朝に何かを食べるのは無理、くらいの気持ちである。
 
 
暫くして運ばれてきたサンドイッチは予想以上にボリュームがあり、食べる前から辟易しかけた。しかし一口齧ってみると果肉が多く入っており噛みごたえがある上にクリームにはヨーグルトが混ぜ込んであるらしくとても美味しい。一口、もう一口と口に入れるうちに案外食が進み、結局食べ切ってしまった。 美味しかったので食後の飲み物と一緒に昼用のサンドイッチを注文することにしよう。
アッシュがそんなことをホクホク顔で考えていると、イーブイの方はまたそんなものを食べているのかと言わんばかりのげっそりとした顔だったが、それも最初だけで今は自分の分のフーズを食べ終え満足そうである。
 
その後毛づくろいを始めたイーブイを見つつ、丁寧に包まれたサンドイッチと一緒に運ばれてきた食後のカフェオレをのんびりと飲む。
こちらもミルクが濃くて美味しい。ふと隣を見るといつの間にか一人の男性が同じように座ってコーヒーを飲んでいるのに気づく。
 
「やぁ、おはよう」
「おはようございます」
 
トレーナーさんかい?と聞かれたので色々思う事はあったが大人しくはいと頷くと、彼はニコニコと笑いながら話を振ってきてくれた為、暫くそのまま談笑を続けていた。
すると途中で思い出したように、
 
「3年ほど前の話だよ。ロケット団という奴らがポケモンを使って悪いことばかりしていたのだよ。だが…」
 
彼はそこでコーヒーを一口飲むと少年の様な顔でにかっと笑顔を浮かべた。
 
「必ず悪は滅びる!ある少年の活躍で解散させられたのだよ!」
「確かに、彼らは見なくなりましたね。…ところで、その少年はその後?」
 
あぁ、確かにそんな話してたなと思い出しながら疑問に思ったことを聞いてみると、残念ながら誰も知らないらしいと教えられる。
 
「そうですか」
「ところでトレーナーさんはこれから何処へ?」
「ちょっと32番道路の方へ用事がありまして」
 
すると男性は道路の手前は誰が通っても平気だが、洞窟の方へはキキョウのジムバッジが通行証かわりになるんだと教えてくれた。
成る程、洞窟内は危ないから未熟なトレーナーや一般人が遭難しない為のものなんだろうとアッシュは納得する。
「色々ありがとうございました。楽しかったです」と礼を言って立ち上がる。彼もこちらこそありがとうとにこやかに笑みを浮かべて、食堂を去るアッシュ達を見送ってくれた。
 
 
その後ポケモンセンターを後にすると、キキョウシティの北側のゲートから32番道路へと通り抜ける。
すると確かに一人の男性が立っているのが遠目で確認出来、あの人がさっき話に上がっていた通行確認の人なんだろうとアッシュは1人納得する。
 
「イーブイも、あっちへは行けないから行かないようにな」
「ブーイ」
 
言葉にするなら軽く流された感じだったのではいはい、とかそんなところだろうか。実行してくれるかは兎も角、とりあえず返答があったのであとはイーブイに任せるしかない。
イーブイがそちらへ行かないように注意しながら、草むらの少し先にある岩場の方へと近寄ると薬草について写したノートを見る。
どうやら目的の植物はこの岩山の日向になるところに自生しているらしい。
ちなみに原本は持って来てもまだ読めない為、大人しくカンポウ宅へと置いて来ている。
今度は貰った写真を見ると、苔のような変わった形をしている。岩肌に自生しているとの事だったので見ればすぐ分かるだろうと思い、同じ草はないか調べ始めたのだった。
 
 

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