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その後暫くカンポウと今後について話していると、いつの間にかラッタがカンポウの薬草帳やら紙の束やらを持ってアッシュの後ろに立っていた。
それに気づいたカンポウは「これから必要になるじゃろうから持ってるといい」と言って頷いてみせる。
とりあえず受け取れという事だろうと思いアッシュがラッタからそれらを預かる。どうやらこのまま貰って勉強に使ってもいいらしい。
カンポウはカンポウで「これからは忙しくなるからのー」と言ってラッタと目配せし合っている。
意外と元気じゃないかと落胆すると同時にいつもの調子を取り戻したカンポウの様子に何処と無く安心してしまった。やはりカンポウはこれくらいでないと何だかアッシュの方も調子が出ないというものである。



ひとしきり話を聞いたアッシュが外に出ると、玄関横に寄りかかるようにしてグリーンが待っていた。
ピジョットはどうやらボールに戻ったらしく、あの大きな姿はもう見えない。
アッシュに気づいたグリーンは寄りかかっていた体勢を戻し、アッシュへと向き直った。

「どうだったよ?」
「大丈夫そうだ。ついでに就職先が見つかった」
「は!?」

何があったと詰め寄るグリーンにアッシュは先程までの経緯を話した。

「そういうことか。なら尚更1回マサラに戻ってこいよ」

本格的に勉強し始めたら身動き取れなくなる。姉ちゃんも心配してる、と続けるとグリーンは腕を組んで眉根を寄せた。
何がなんでもグリーンは1度戻ってきて欲しいらしい。急に音信不通になったのだからそれもそうだろう。というか恐らくまだ疑われている。
グリーンとしては今のうちにアッシュから言質を取っておきたいのだろう。
アッシュもそろそろ1回は戻るべきかと思い、既にカンポウへは1度故郷に顔を出す旨は伝えてある。
暫くはこちらでカンポウの様子を見ようかとも思ったが、手助けならばポケモン達で事足りると首を横に振られてしまった。
むしろこれからは忙しくなるだろうから今のうちにゆっくりしてきて欲しいとまで言われてしまった。そうなってはアッシュとしても拒否する理由は特にない。
その上自身もそろそろ実家にある荷物を取りに行きたいと思っていた為グリーンの提案に大人しく頷く。
するとようやくこちらもほっとしたのか、大きくため息を付くと肩の力を抜いて脱力した。
何だか随分心配を掛けているなーと思ったが、そもそも自分のせいだなと他人事のような気持ちを改める。グリーン自身も割と自由というか、マサラ出身者はマイペースな気概の者が多いが割と常識人なグリーンとしては気が気ではないらしい。

その後、2日後に迎えに来るという約束を取り付け、グリーンは一先ず自身の用事を済ませにコガネを後にしたのだった。



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