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その後、アッシュは目が痛くて景色を見る余裕も無いままあっさりとマサラへと降り立った。
いくら数年ぶりとはいえこんなにあっさりと帰ってくると未だ実感がわかない。クラクラと揺れる頭を両手で押さえていると、ピジョットをボールに閉まったグリーンが呆れたようにアッシュをみた。

「大丈夫かよ…。とりあえず、おばさんが留守だから研究所へ行こうか」

グリーンに先導されて研究所まで行く間、マサラの住民達にも会うこととなった。顔を見るなり「お帰り」と口々に返してくる彼らにアッシュもまた「久しぶり」と片手を上げて応える。
中にはグリーンの様に「全然顔見せないんだから!」と怒り出す近所のおばさんもいたが、アッシュが元気にしていると分かると安心した様子であった。
そもそも、親子揃って何処か出て行ってしまったので最早遺伝だと思われている節がある。実際に似たもの親子と言われたが、聞かなかった振りをしよう。


そんなことがありながらも無事研究所に到着すると、馴染みであった博士の助手達がすぐに気がついた。
驚いて駆け寄ってくる彼らに「ご無沙汰してます」と返しながら進んで行くと、話を聞きつけたらしいオーキドが奥で待っていた。

「アッシュか!久しぶりだのぅ!」
「博士、お久しぶりです」

近くまで歩みを進めると、座っていたオーキドはすぐ様立ち上がり、「漢方屋に就職したそうだね?やりがいのある仕事を見つけたんじゃな」とアッシュの両肩を叩いて祝ってくれる。
そのまま暫し談笑していると、仕事から体調のことなどに話が少しずつ移り変わって行く。
その途中、ポケモンを貰い受けたことを話すとオーキドは驚いたように目を見張った。
「この前会った時はいなかったからそのあとのことか!」

まさかアッシュがポケモンを持ってくれる日が来るとは…!とオーキドは喜ぶばかりで自身の過ちに気づいた様子はない。
オーキドの言葉にグリーンが固まったのが見え、アッシュは顔面を覆いたくなった。

「じいさん…!アッシュが何処にいたのか知ってたのか?!」

そこでようやくオーキドも自身の失態に気づいたらしく、しまったといった表情でちらりとアッシュへ視線を寄越した。
そんな視線を寄越したところで後の祭りである。今更どうにもしようがないだろう…!

あぁやってしまった、またうるさくなると瞬間的に悟ったアッシュは博士に詰め寄るグリーンには目もくれず、くるりと綺麗に回れ右をする。そして競歩でするかのような速さで足を動かすとそのまま研究所の外へと出て行ったのだった。
その時間、わずか数秒足らずのことで一瞬オーキドもグリーンも反応が遅れたが、ハッとしたグリーンは慌ててアッシュを追いかけてきた。



明らかに誤魔化し切れていないというか何も語っていないが、とにかくほとぼりが冷めるまで避難しなくてはと感じたアッシュは、研究所の前でどこへ行こうかと思案する。
その時、アッシュの頭上を何か巨大な影が覆い、太陽の日差しが遮られた。そのせいか、一瞬にしてひやりとしたとした冷たい風が頬を撫でた。
逆光でよく見えないが不利な状況に陥ったことだけは直感的に感じ取る。

「……なんてタイミングだよ」

誰が降りてきたのか分かってしまい、アッシュは今度こそ顔を覆って静かに呟いた。






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