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ドスンという音と共に着地したオレンジ色の大きなポケモンはやはりリザードンであった。そしてそこから降りてきたのもまたアッシュの想像する通り、もう一人の弟分であったのだから人生上手くは行かないものである。

「久しぶりレッド」

逃げる事も重要だが、弟分に会えたことは素直に嬉しい。彼の行方が分かって人心地ついて後すぐにアッシュが旅立った為、レッドと会うのはグリーン以上に久しく感じる。
昔は小柄だったレッドもすっかり大きくなったなぁと懐かしさを噛みしめるアッシュとは違い、レッドはただただ無言を貫く。
そんな彼に少々居心地の悪さを感じたアッシュはレッドの顔を覗き込んだ。

「……」
「レッドー?」
「………」
「おーい?」

アッシュが目を合わせようとしても微妙に視線を逸らす為レッドと視線が合わない。
つーんとそっぽを向く様子を見てこれはかなり拗ねているなと判断したアッシュもまた思わず黙り込んだ。
ぱっと見ただけではいつも通りの無表情だが、流石に弟分の顔色の違いくらいは嫌でもわかる。
とはいえ、レッドは声に出さない分を目で訴えるという分かりにくい意思表示をしてくるので、それを分かってやれるのはアッシュとグリーンくらいしかいないのだが。
その兄貴分パワーで判断するに、レッドはアッシュの予想以上に不貞腐れていた。

「悪かったって!」

黙って行ったのは悪かった、ごめんなとアッシュが手を合わせながら苦笑する。
最初は全く意に介した様子もなくそっぽを向いていたレッドだったが、アッシュが続けるとだんだんと視線が和らいでいく。
恐らく自身も黙っていなくなった前科があるからあまり強く言えないと言った所だろう。
だが、後少しでレッドと和解しそう…という所で後から追いついてきたグリーンがすかさず割って入ってきた。

「許すことはないぞレッド!アッシュのヤツ、俺たちに居場所を教えないようじいさんに口止めしてたんだからな!」

あぁ、やっぱりバレたとアッシュは内心で頭を抱えた。
いや流石にあの状況でバレないとは思っていないがそれでも見なかったことにしたかった。
正直、グリーンのお説教はこういっては何だがもう十分聞き飽きていたのだ。そんなことを言っているからお前は分かってないと言っているんだと脳内グリーンが怒り始めたので慌ててそのイメージをかき消す。

「……アッシュ、どういうこと?」
「あー…」

その間にも続いていたグリーンの説明で、和らいでいたはずのレッドの目元が再びきつくなる。
帽子を目深に被っている分、目つきが悪く見えるなと余計な所に行った思考を慌てて修正した。
そこでさてどうしたものかと考え出したアッシュだったが、説明するのも止められるのも面倒だったと素直に言えば雷が落ちるのは明白である。
せっかく落ち着いてきたというのに、またも詰問態勢に入ったレッドにアッシュはすぐ様上手い言葉が出て来る程多弁ではなかった。




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