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「勿論出来なかったらペナルティがあるぜ!」
「ペナルティ?」

グリーンの言葉にアッシュは首を傾げる。とてつもなく嫌な予感がする。もはやこういった勘には定評のあるアッシュである。思わず後ろへと一歩下がると、それを遮るようにグリーンは言葉を続けた。

「おう!95点以上取れなかったら研究所のパラセクトと同居し……「全身全霊かけて全力でやらせて頂きます」…おう!!」

遮るように言ったアッシュの言葉にグリーンは満足そうに頷いたのだ。
グリーンはあの電話中映ったパラセクトを見たアッシュの様子から全てを察したらしい。そしてこれは使えると早速使ってくるのだからなんて仕事の出来る男だろうか。アッシュからすればひどい仕打ちであるが、それも高得点を取れば問題ないだろう?と首を傾げるのだから恐ろしい。
最早自分に拒否権などない。

全力でやらねば死ぬ…、それくらいの危機感をアッシュは感じていたのだ。





翌日、研究所に顔を出すと、テスト用紙の束を片手で 肩に担ぐようにして持ったグリーンが爽やかな笑顔で出迎えてくれた。
その笑顔も違和感ありまくりで怖いが、それよりもその笑顔の裏にあるであろうキノコの幻影が怖いアッシュである。

「さぁて、テスト始めるか」

さっと問題用紙と答案用紙を渡すと、グリーンは持ってきていたらしい書類に目を通し始める。それを横目で見つつ、アッシュもテスト用紙に目を向けた。
最初はポケモンの名前がランダムに書いてあり、それのタイプと弱点を書き込むものであった。
その次はポケモンの技名やその効果を書き込むもの、よくポケモンに使われる道具の名称などが続く。
アッシュはキノコの幻影を振り払うと、覚えたことを思い出しながらペンを走らせた。

「終わった」
「ん?よし!じゃあ答え合わせだなー」

テスト終了後、読み終わったらしい書類を片隅に追いやっていたグリーンは楽しそうな様子で片手を差し出してくる。ここ数日見た中で最高の笑顔である。
ちょっと見ないうちに鬼畜度も上がっていたのか。そんなもの上げなくて良いというのに。
その笑顔に嫌気が差しながらもしっかりと手渡すと、グリーンはペンを赤に持ち替えてすぐその場で採点を始めた。
何しろ故郷での安寧がかかっている為、シャッシャッと続く採点の音に段々とアッシュの緊張感が増してくる。
暫くそうして待っていると、

「良かったなアッシュ!満点だぜ!」

グリーンの嬉しそうな声が挙がった。
どうやら自分はやれば出来る人間であったらしいとホッと息を吐き出したのだった。

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