可愛い子には旅をさせよ


数日後、旅の準備を済ませたアッシュはカンポウ宅を再び訪れた。

「来たのぅ。準備は大丈夫かの?」
「あぁ」
「家の方も無事解約できた様じゃな」

カンポウの言葉にアッシュは頷く。
実は旅に出ると決まった時、カンポウから部屋について助言があったのだ。
ある程度の小物ならばパソコンにも入るし、入らない物はうちで預かるから解約する方が経済的ではないかという話だった。

確かにそれについては考えていた為、アッシュはその後すぐ部屋を解約する手続きをしたのだ。解約日は今日に設定してあった為、今アッシュの部屋はもぬけの殻である。
トレーナーカードの住所もジョーイに話して実家の方に移してあるし、連絡先については自身のポケギアと一緒にカンポウ宅を指定してある。
家には誰もいないので緊急連絡先としてはカンポウ宅の方が妥当だろう。
安心したらしいカンポウはうんうんと頷くと、話を切り替えた。

「ホウエン地方には船で行けるからの。アサギシティから船が出ておるからそれに乗るといい。カイナシティという街に着くからそこから更に北にあるキンセツシティに向かうんじゃ」
「分かった。行ってくる」
「気をつけてな」

カンポウとラッタ、パラセクトに見送られながら、アッシュ達は早速35番道路へと繰り出した。

「ウパー?」
「あぁ、とりあえずエンジュに向かうよ」

まず何処へ?と尋ねられたアッシュはウパーに答える。
通信しておいた通り、このまま先ずはエンジュへと向かうつもりだ。

途中の道はもう慣れたもので、道なりもバトルにも特に問題なく午後1番にはエンジュへと到着した。
とりあえず挨拶も兼ねてエンジュのポケモンセンターへと顔を出そうとセンターの扉を潜る。

「あら!アッシュさん!」
「お久しぶりですジョーイさん」

すぐにアッシュだと気づいたジョーイがパソコン作業を止めて立ち上がったのでアッシュもまた頭を下げる。
そのまま世間話をしていると突然、横から何か覆いかぶさってきた。

「うわ!!」

何事かとびっくりして突進してきた物体を見やると、そこにいたのは見覚えのある子犬ポケモンであった。

「お前、あの時のガーディか!」
「えぇ。実はあの後居心地が良かったのかここに居着いてしまって」

大喜びしているらしいガーディとアッシュの様子を見たジョーイはくすくす笑いながら今ではここの番犬ポケモンなのだと教えてくれた。

「そうか。……良かったな」
「ガゥ!」

アッシュがよしよしとガーディの頭を撫でると嬉しそうな様子でガーディは鳴いた。
ブンブンと尻尾をふる様子は、憑き物が落ちたのかように爽やかで人懐っこい。
元気なガーディの様子にウパーも釣られてはしゃいだのか、アッシュ達の周りをぐるぐると走り回っている。
ちなみにイーブイはと言うと、以前喧嘩を売られたことを覚えているからか離れたところでしかめっ面をしていた。
が、次の瞬間にはイーブイごとガーディにタックルをかましたウパーのせいでまとめてアッシュへダイブする事になった。
勿論、その後ウパーへ烈火のごとく怒り飛びかかって行った為慌てて止めることになったが。


アッシュはぶつけた後頭部を労りながら、騒がしくした事を謝罪するとセンターを後にしたのだった。





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