いざ、新天地へ


無事夕方の船に間に合った一行はそのまま朝まで船に揺られ、着陸を知らせるアナウンスで目を覚ました。
下船時にチケットを確認した後、ようやく船から降りたアッシュ一行。暗くて周囲の景色はあまり見えないが、初めて踏むホウエン地方の土に少しだけ気分が上がった。
向かい側には何やら建物が見える。そのまたさらに奥にも一際大きな建物が見えるので中々に栄えた土地らしいことが分かる。
その上カントーやジョウトよりも暖かな気候らしく、あたりを見渡すと周りには薄着の人が多い。
上着を着ているとやや暑い気がするとアッシュは上着のえりをうちわ代わりにして風を送った。
ホウエンのことはよく分からないが、今後もこんな陽気ならばそのうち上着は買い直さなければなと思いつつ、まずは夜も遅い為ポケモンセンターで宿をとることにした。


センターで一夜を明かした翌朝、イーブイとウパーへ朝食のフーズを渡したアッシュはフエンタウンの場所を把握する為持ち込んだ朝食を食べながら事前に渡されたマップを確認する。
ここから北へ行くとカンポウの言っていたキンセツシティという大きな街に行けるらしい。そこから更にサイクリングロードを通って北西へと向かうとフエンタウンへ行けるみたいだ。
……が、残念ながらアッシュは自転車が無い為通れない。仕方ないので遠回りするしかないであろう。
ここには書かれていないが、流石に徒歩ルートがないということはないだろう。
恐らくポケモンが多く出てくるだろうから準備しておかねばと咀嚼しながら考えを巡らせた。

食後、ジョーイにキンセツシティまでどれ位かと問うと半日も掛からないとのことだった。ならすぐに向かうかとアッシュはとりあえず近くにあったカイナ市場を冷やかしつつ110番道路へと繰り出した。

道路へ出て割とすぐにあったサイクリングロードの門前では案の定、自転車がないと通れないと断られた為大人しく草むら道を通ることにする。
途中で出会った短パン小僧の少年に道を聞きつつ先に進むと、今度はメガネを掛けた青年に声をかけられた。

「君のポケモン見せてくれない?ひと目でいいからお願い!」
「いや、先を急ぐんで」
「えぇ……!?」

懇願する相手を無視し、アッシュは先を急ぐ。
……が、そのすぐ先に待ち構えていた青年に道を塞がれた。

「お前の作戦はみえた!」
「はい?」

何か言う暇もなく割と強引にバトルへと持ち込まれる。
せっかくだし、たまにはウパーにも頑張ってもらうかとウパーのボールに手を伸ばすが、

「あれ?」

ふと気づけば奥の草むらで草をかき分ける見知った青色が見えた。

「おいウパー…?……ウパーさーん………おーい」

どうやら草むらが気になるらしく、ウパーに戦闘を指示をしようとするが聞こえていないらしい。楽しそうにゆらゆらと尻尾を揺らしながらガサゴソ草をかき分ける後ろ姿が見える。
ならば仕方がない。
アッシュはイーブイのボールに手を伸ばした。
相手のトレーナーはまさかの戦闘放棄に呆気にとられている。その間にイーブイで無事勝ち進む。
その後もアッシュ達はそのままキンセツシティまで割と困ることなくサクサク進むことが出来たのだった。


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