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店内に入ると、すぐ左手に最新であろう自転車が並んでいる。コガネとは違い万人受けを考えた色とりどりな自転車だ。
その奥にあるのは専用のヘルメットであろうか。
普通のものだけでなく、ロード用であろうスタイリッシュな見目のものも置いてあった。
時間帯のせいかあまり人入りは多くなく、難なく小柄なウパーを見つける。

ウパーは色を追うようにして自転車の並び順に走っていたが、すぐに飽きたのか店の奥へとそのまま走っていった。
母親とやってきたらしい小さな子が、いつの間にかやってきた小さなお客に嬉しそうに手を振っている。
アッシュは母親にぺこりと頭を下げると、ウパーを追ってアッシュも店の奥へと移動する。
奥に行くにつれ専門的なパーツを兼ね備えた所謂「高い自転車」に変わっていくのが分かった。
色とりどりな見た目よりも性能を重視したそれは値段がやはり他とは違う。
ここまで来るとコガネに置いてあったものと似ているので少し見慣れた光景である。何だか懐かしいなぁと思いながらキョロキョロとしていると、同じくパーツ別売り場のところでキョロキョロしているウパーを発見した。

「おや?アッシュ君じゃないか!」
「……?」

見つけたウパーの隣へとかがみ込んだところで見知った声が聞こえ、中途半端な格好で後ろを振り返る。
するとそこに立っていたのは何と件の店長その人であった。後には店長のパートナーであるレアコイルも浮いている。とはいえ、この先には細かい部品がある為か少しだけ離れた所にいるようだ。

「こんな所で会うとはね…!!」

いやぁ、元気だったかい?と店長は立ち上がったアッシュの両肩に手を置いてニコニコとしている。
暫く見なかった為改めて店長を見てみると、彼がだいぶ風変わりなのが分かる。
あまり日焼けしないアッシュに比べ、明らかに日焼けした褐色の肌に焼けて色の抜けた茶髪はどちらかというとサーファーのようだ。
昔レースに出場していたと聞いたのでスポーツマンだったのだろうからその影響だろうか。
アッシュもそこそこ背が高い方だが、店長はというとそれを上回る背丈である。
自転車に乗っていただけあって足元の筋肉はしっかりしているが、上半身も普段から鍛えているのが分かる。
旅をして少しくらいは筋肉が付いただろうかと思っていたアッシュだったが店長の前では霞んでしまう。羨ましい限りである。
とはいえ、見た目とは裏腹に性格は相変わらずのほほんとした雰囲気の穏やかな人である。自転車の事が絡まなければ、だが。

「お久しぶりです。まさかここに居るとは」

店長の後ろにいたレアコイルも機械的な声を出して久しぶりですと挨拶してきた。
それに対してアッシュも「レアコイルも久しぶり」とだけ返した。
それを見て少しだけ驚いたように目を見張ったあと、店長は言葉を続ける。

「ここの店長さんとは知り合いでね。最新の自転車について話していたんだよ。自転車のスピードとテクニックの両立の為には何が必要かという話でね。そもそもスピードを上げる為には部品の強化が重要だけどあまり重いものは操作にテクニックが必要だよね。万人が乗れる自転車にするには操作はシンプルが1番だからそれだとあまり思わしくない。じゃあどうするかという話でね……」

あぁ、始まってしまった。間で相槌を打とうとしたが、打つ暇もない。こうなると店長はいつまでも自転車について語り続けてしまうのだ。
後ろでレアコイルが困ったようにふよふよ浮いている……と思っていたら、更に後ろから声がかかった。

「あぁ、いたいた。サトル君、待たせてすまないね」

声を辿ると、立っていたのは穏やかな顔の男性であった。
ちなみにサトルとは店長の名前である。あまり聞く機会もないので一瞬誰のことかと思案したが、状況を見てふと思い出したアッシュであった。

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