行きも帰りも体力次第


自転車の使い方や組み立て方そして既に知っていたがメンテナンスの仕方を再度店長から教えて貰った後、アッシュ達はサイクルショップを後にする事にした。
店長にこのあとどうするのかと問うと、また素材探しの為他へと旅立つのだ教えられる。
まだまだ納得のいく素材に出会えてはいないらしい。ここにもたまたま立ち寄ったのだが、同じくカスタムに悩むカゼノと共にあーでもないこーでもないと語り尽くし、ついでに思いついたものを試作していたらしいのだ。

「店長もレアコイルもお元気で。無理し過ぎないで下さいね」
「アッシュ君も気をつけてね。あ、そうそう!もしこのあとご飯食べるならビレッジサンドがオススメだよ!」

良かったら行ってみてね!と笑う店長にアッシュは頷いた。

「いつか最高のものが出来上がった時は知らせるよ」
「楽しみにしてます」

店長とカゼノへ頭を下げると、アッシュとウパーもまたイーブイを迎えにセンターの方へと向かったのだった。



イーブイを迎えに行った後、一行は早速店長が勧めていたビレッジサンドとやらを探しに行くことにした。
カゼノサイクルショップから110番道路側へ戻るように移動すると、途中に目当ての店を発見した。

「あったあった。……ん?バトルフードコート?」

よくよく見てみれば、看板にバトルの文字を見つけてアッシュは思わず立ち止まるが、そこで止まらないのが手持ちの2匹である。
アッシュの制止の声もなんのその。さっさと店の中へと飛び込んでいく。

店内はテーブルと椅子があちこちに置いてありなかなか広々としている。
一見普通のフードコートのようだが、席を見れば所々でバトルをしているのか、ポケモン達が戦っている姿が見えた。

「あー、そういう事ね…」

どうやら食べる為にはバトルが必須の様である。
それはめんどくさいなぁと思っていたアッシュだったが、手持ち達は既に注文カウンター前で待機中である。
これは諦めるしかないなと渋々注文することにしたのだった。

結果、イーブイが2戦することでどうにかビレッジサンドにありつく事が出来た。隣に座っていた少年の話によると、これはイッシュ地方という所から出店している有名店らしい。
色んな地方があるんだなぁ。


一行は、満足したお腹を抱えてキンセツシティをあとにした。
ちなみに店長のおすすめなだけあって噂のビレッジサンドはなかなかに美味しかったが、値段はそこそこ高かった。





111番道路ではたまに待ち構えたトレーナーに勝負を挑まれるが、ウパーが先へ先へと行ってしまう為殆どを断りつつそれでもしつこいトレーナーとはイーブイでバトルしながら自転車でサクサクと進んで行った。

「あぁ、いたいた。ウパー、あんまり離れないでくれよ」

ずんずん進んでいたウパーを前方にで見つけ、アッシュはようやっと一息ついた。
どうやら大岩に阻まれて立ち往生していたようだ。お陰で追いついた訳だが。
「ブイブイ!」
「ウーパパー」
イーブイはお前もバトルしろとか何とか文句を言っているようだが、ウパーは岩の方が気になるらしく、あまり聞いていない。

アッシュもまた、確かにこの岩はどうしたものかと観察する。どうやらヒビが入っているらしく、攻撃すれば割れそうだ。
とはいえ、確かいわくだきとか言う技だった気がする。
うーんと腕組みをして思案していると、足元で不満そうに歯ぎしりしていたイーブイがふと思い出したようにひと鳴きした。

「ブイ、ブイブイ」
「え、貰った?何を?」

旅の途中で貰っただろうぶっきらぼうに言うイーブイの言葉を頼りに記憶を探る……と、思い出した。

「あぁ!あの技マシンか!」

そう、以前カンポウの手伝いをしていた時に道中で半強制的に渡された技マシンがいわくだきだったのだ。
よく覚えていたなと感心すると、嬉しかったのか少しだけ尻尾がゆらゆらと揺れる。
早速アッシュはカバンをガサゴソを漁ると、技マシンを取り出した。使い方はグリーンの講義で学んだので覚えている。
確か覚えさせるにも相性があると言っていたはずだ。とはいえ、実は旅に必須の技マシンだけは教えこまれている。
いわくだきはウパーでも覚えられるものだった。

「ウパー、ちょっと頭を出してくれ」

うん?と振り返ったウパーはよく分かってなさそうにしながらもはーい!と頭を差し出してくる。
ウパーの頭にそっと技マシンを翳すように当てるとキュインと機械音がなった気がした。
ウパーも何か変化があったらしく、びっくりしたようにこちらを向いた後、ぴょこんと飛び跳ねる。
アッシュは辺りを見回し、人気がない事を確認すると、

「出来るか?」
「ウパ!」

任せろと鳴くウパーにいわくだきを頼む。ウパーが岩に体当たりの容量でぶつかっていくと、ウパーよりも大きな岩はその一撃で綺麗に砕かれた。
本当はバッジがないと無免許と見なされて怒られるどころか最悪ジュンサーさんに連行されるらしいがとりあえず今はそうも言ってられない。

「よし、さっさと通り抜け……ん?これ真珠か?」


アッシュが気づかれないようイーブイ達を連れてそそくさとその場を後にしようとすると、何やら落ちているのに気づく。
どうやら岩の間から転がり落ちたようだ。
とりあえず何かに使えるかもしれないとカバンに入れ、今度こそ一行は先へと進んだのだった。

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