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その後もバトルをしつつ、途中野宿も挟みながらアッシュ達はようやっとえんとつ山のロープウェイ乗り場までたどり着いた。
途中から自転車では登りがきつくなり、結局折りたたみ歩くこととなったのだ。
ずっと山道を歩いてきたので人の気配の濃い建物にホッとする。
喉が乾いたとイーブイが呟いたのを機に揃って自販機で飲み物を買い、ソファで一息つく事にした。
イーブイはミックスオレ、ウパーはサイコソーダを買う。
とはいえ、ウパーは炭酸を飲ませたことがないので心配になったアッシュと半分こである。
最初は炭酸の刺激に驚いてぴょんぴょんと跳び跳ねていたウパーだったが割と気に入ったらしい。ぴょこぴょこと尻尾を床に叩きつけながらゆっくりとソーダを飲んでいる。
イーブイの方は何度か自販機で買って飲ませたことがあるので慣れた味なのだろう。飲みながらパタパタと尻尾を振っている。
それにしても高い。アッシュは自販機とウパーが飲んでいるサイコソーダを見比べながら高すぎるのではと内心思ったが口にすることは無かった。

「さて、そろそろ行くか」
「ブーイ」
「ウパー!」

返事を返す2匹を連れてアッシュは乗り場の方へと移動する。

「登りロープウェイまもなく出発です」

ご利用になりますか?という問いに頷くとそのまま案内される。
乗っている間は立ち上がらないようにと簡単な説明を受け、ロープウェイは出発した。
ぐんぐんと山を登っていくロープウェイにウパーもイーブイも身を乗り出すようにして窓の外を楽しんでいる。さっきまでいた道が遠くなっていく様は見ていて楽しい。アッシュも初めての経験に見晴らしの良い景色を楽しんだ。

「ありがとうございましたー」

意外にもロープウェイを満喫したアッシュ達はそのまま外へと移動する。
扉を出た先はえんとつ山の頂上付近である。ふと何か降っているのに気づいてすぐに足を止めた。

「雪…?じゃないな」

落ちてくる粉は白よりもどちらかと言うと灰色で、手に落ちたそれを指先で触るとほろほろと崩れる。
イーブイやウパーもまた、不思議そうに上を見上げていた。

「火山灰じゃよ」

声に驚いて振り返るとそこには老婆が立っていた。
彼女の話によると、えんとつ山は活火山らしく、噴火もするらしい。なのでよくこうして火山灰が降り注いでいるらしいのだ。
危なくないのかとアッシュは心配したが、地元の人達は慣れたものでこうして何事もなくここで生活しているらしい。

「さ、そんなえんとつ山名物のフエせんべいだよ!」

どうだいと老婆はにっかり笑う。なかなか逞しい商売魂である。
食べたい食べたいと騒ぐウパーをなだめ、とりあえず3枚買ってみる。海苔の香りも良いそれはパリパリとして美味しかった。
イーブイもウパーも口に合ったらしい。ウパーなど、すぐに食べ終えてイーブイの分を狙っている。
頂戴ちょうだいと騒ぐウパーを尻尾で押し退け、イーブイも何とか煎餅を完食した。

「ところであんた方どこまで行きなさる?」
「フエンタウンへ行きたいんです」
「なら、この先のデコボコ山道を段々に降りていくとすぐだよ」

アッシュは売り子にお礼を言うと、2匹を連れて言われた通り山道の方へと降りていった。



「やっと…着いたか……」

売りのお婆さんの言う通り、段々に山道を降りていくとようやっとフエンタウンへと到着した。
長かった。正直長かった。
山道は降りる方が楽だと聞いていたが、楽は楽でも登るよりマシだというだけの話である。下りは下りで膝や太腿に負担が強くかかるのだ。
最初は自転車で降りていたが、途中にあったかなり急な下りは上手く自転車を操作出来ずひっくり返った為砂だらけになるのを覚悟して滑り落ちる事となったのだ。
あまり運動もしてこなかったアッシュにはかなりキツいものであった。現に膝がカクカクと小刻みに揺れているような感覚がある。
きっと明日には筋肉痛になっている事であろう。
しかもようやっと町に着いたというのにまた夜である。
とりあえずカンポウの言っていた店には明日、いや足の具合によっては明後日行くとして、アッシュはまたそそくさとポケモンセンターへと入っていったのだった。


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